平成19年(2007年)4月に附属図書館長に就任したのをきっかけに、「知識よりもまずは感動を!」をモットーにして、学生に知識だけではなく、感動をも与えて、それによって学生に主体性を身につけてもらい、自主的な学習意欲を掻き立ててもらうことを目的に、同年5月より本メールマガジンに連載を始めた「知的感動ライブラリー」も、8年の歳月を経て、今回で当初からの予定であった100回目を迎えました。2年間の附属図書館長の職務を終えたあと、引き続いて4年間、総合科学部長をも務めることになり、その激務の中での毎月1回の執筆はかなりハードな作業ではありましたが、逆に原稿執筆のための映画・オペラ鑑賞や読書を一つの楽しみとして、集中力を働かせることで、なんとか当初の目標を達成させることができました。
振り返ってみますと、これほどよく書き続けたものだと、自分でもびっくりしていますが、メモによると、まだまだ取り上げたい作品はたくさんあります。たとえば、夏目漱石原作の映画『それから』・『我輩は猫である』・『こころ』、川端康成原作の映画『雪国』・『古都』・『千羽鶴』、谷崎潤一郎原作の映画『春琴抄』・『細雪』や三島由紀夫原作の映画『炎上』あるいは『金閣寺』・『永すぎた春』、井上靖原作の映画『氷壁』などといった日本文芸作品関係のものをはじめ、松本清張原作の映画『点と線』・『砂の器』・『張込み』や五木寛之原作の映画『青春の門』などの娯楽作品も候補に挙がっていました。今回の100目で初めて取り上げました山田洋次監督の『寅さん』シリーズもできれば48作すべてを紹介したいところでした。オペラ作品についても、モーツァルト作曲の歌劇『フィガロの結婚』や『ドン・ジョバンニ』・『コシ・ファン・トゥッテ』もまだ取り扱っていません。チャイコフスキー作曲のバレエ『白鳥の湖』や三枝成彰作曲のオペラ『忠臣蔵』なども取り上げたい作品でした。そのほかにも挙げればきりがありませんが、予定であった今回の100回で完結にしたいと思います。長い間、ご愛読いただき、まことにありがとうございました。
このメールマガジンは毎月一つずつ読んでいくだけではなく、バックナンバーでこれまでの原稿も好きなときにいつでも簡単に読むことができるところに大きな意義があります。これから映画あるいはオペラを鑑賞していく際に、その作品がこの「知的感動ライブラリー」で取り上げられていれば、是非、活用していただきたいと思います。そのようなことを期待して100回の原稿を書いてきました。これからの映画・オペラ鑑賞の際になんらかのお役に立ちますなら、これ以上うれしいことはございません。学生の皆さんもこのような芸術作品の鑑賞を通じて、大いに感動して、それを新しい自分を見つけ出していくことにつなげていただければと思います。学ぶということは、新しい自分に出会うことです。学生の皆さんの今後ますますのご健闘をお祈りして、終わりの言葉にしたいと思います。
以下に、「知的感動ライブラリー」(全100回)の一覧表を掲載しておきます。
「知的感動ライブラリー」(全100回)一覧表
- メールマガジン「すだち」第28号(2007年5月21日)
第1回 東映映画『バルトの楽園(がくえん)』(平成18年6月封切り) - メールマガジン「すだち」第29号(2007年6月20日)
第2回 ドイツ映画『ふたりのロッテ』(1994年) - メールマガジン「すだち」第30号(2007年7月13日)
第3回 黒澤明監督映画『蜘蛛巣城』(東宝1957年) - メールマガジン「すだち」第31号(2007年8月16日)
第4回 ヴェルディ歌劇『椿姫』(全3幕) - メールマガジン「すだち」第32号(2007年9月14日)
第5回 ヴェルディの歌劇『椿姫』(2002年2月ジュゼッペ・ヴェルディ劇場)(2回目) - メールマガジン「すだち」第33号(2007年10月19日)
第6回 二つの『天国と地獄』(黒澤明監督と鶴橋康夫監督・脚色) - メールマガジン「すだち」第34号(2007年11月16日)
第7回 東宝映画『八甲田山』(昭和52年)の思い出と解説 - メールマガジン「すだち」第35号(2007年12月14日)
第8回 新旧二つの映画『椿三十郎』(黒澤明監督と森田芳光監督) - メールマガジン「すだち」第36号(2008年1月18日)
第9回 市川崑監督『かあちゃん』(2011年)解説(山本周五郎原作、岸恵子主演) - メールマガジン「すだち」第37号(2008年2月18日)
第10回 黒澤明監督映画『赤ひげ』解説 - メールマガジン「すだち」第38号(2008年3月17日)
第11回 小泉尭史監督『雨あがる』解説(山本周五郎原作、黒澤明脚本) - メールマガジン「すだち」第39号(2008年4月17日)
第12回 壺井栄の小説『二十四の瞳』解説(木下恵介監督の松竹映画、高峰秀子主演) - メールマガジン「すだち」第40号(2008年5月16日)
第13回 さだまさしの小説『眉山』解説(2007年犬童一心監督映画、松嶋菜々子主演) - メールマガジン「すだち」第41号(2008年6月17日)
第14回 竹山道雄の小説『ビルマの竪琴』と市川崑監督の二つの映画
(安井昌二主演と中井貴一主演) - メールマガジン「すだち」第42号(2008年7月18日)
第15回 ヴェルディの歌劇『マクベス』解説 - メールマガジン「すだち」第43号(2008年8月21日)
第16回 ヴェルディの歌劇『リゴレット』解説 - メールマガジン「すだち」第44号(2008年9月22日)
第17回 ヴェルディの歌劇『アイーダ』解説 - メールマガジン「すだち」第45号(2008年10月21日)
第18回 シェイクスピアの原作戯曲と映画『ロミオとジュリエット』(1968年オリビア・ハッセー主演) - メールマガジン「すだち」第46号(2008年11月19日)
第19回 ミュージカル映画『ウェスト・サイド物語』(1961年)の魅力 - メールマガジン「すだち」第47号(2008年12月18日)
第20回 映画『トリスタンとイゾルデ』(2006年アメリカ)における伝統と革新 - メールマガジン「すだち」第48号(2009年1月21日)
第21回 ワーグナーの歌劇『トリスタンとイゾルデ』(全三幕) - メールマガジン「すだち」第49号(2009年2月19日)
第22回 ジュール・マスネの歌劇『ウェルテル』(1892年初演) - メールマガジン「すだち」第50号(2009年3月18日)
第23回 シャルル・グノーの歌劇『ファウスト』(1859年初演) - メールマガジン「すだち」第51号(2009年4月23日)
第24回 松竹映画『坊っちゃん』(1977年夏目漱石原作)の面白さと見どころ - メールマガジン「すだち」第52号(2009年5月19日)
第25回 三島由紀夫の原作『潮騒』とその映画『潮騒』(昭和39年日活) - メールマガジン「すだち」第53号(2009年6月18日)
第26回 東映映画『バルトの楽園(がくえん)』解説(2回目)
(附属図書館リニューアルオープン記念鑑賞会) - メールマガジン「すだち」第54号(2009年7月22日)
第27回映画『八甲田山』(昭和52年)の魅力と教育的意義(2回目) - メールマガジン「すだち」第55号(2009年8月26日)
第28回 東宝映画『眉山』(犬童一心監督2007年)の魅力(2回目) - メールマガジン「すだち」第56号(2009年9月17日)
第29回 映画『村の写真集』(三原光尋脚本・監督2004年)の見どころ - メールマガジン「すだち」第57号(2009年10月21日)
第30回 フリッツ・ラング監督の映画『ジークフリート』 (1924年ドイツ)の特徴 - メールマガジン「すだち」第58号(2009年11月20日)
第31回 フリッツ・ラング監督の映画『クリームヒルトの復讐』 (1924年ドイツ)の特徴 - メールマガジン「すだち」第59号(2009年12月18日)
第32回 映画『ニーベルングの指環』(ドイツ/アメリカ2004年) の見どころ
(ウーリー・エデル監督) - メールマガジン「すだち」第60号(2010年1月21日)
第33回 『いばら姫』の類話とディズニー映画『眠れる森の美女』 - メールマガジン「すだち」第61号(2010年2月18日)
第34回 黒澤明監督映画『用心棒』 (1961年)のおもしろさ - メールマガジン「すだち」第62号(2010年3月18日)
第35回 黒澤明監督映画『まあだだよ』(大映・電通・黒澤プロ1993年)のおもしろさ - メールマガジン「すだち」第63号(2010年4月23日)
第36回 NHK土曜ドラマ『遥かなる絆』(城戸久枝原作2009年)解説(その1) - メールマガジン「すだち」第64号(2010年5月18日)
第37回 NHK土曜ドラマ『遥かなる絆』(城戸久枝原作2009年)解説(その2) - メールマガジン「すだち」第65号(2010年6月17日)
第38回 NHK土曜ドラマ『遥かなる絆』(城戸久枝原作2009年)解説(その3) - メールマガジン「すだち」第66号(2010年7月21日)
第39回 ショパン『別れの曲』(1934年ドイツ)の見どころ - メールマガジン「すだち」第67号(2010年8月20日)
第40回 黒澤明監督映画『八月の狂詩曲(ラプソディ)』(1991年松竹)の解説 - メールマガジン「すだち」第68号(2010年9月17日)
第41回 黒澤明監督映画『七人の侍』(昭和29年東宝)の魅力 - メールマガジン「すだち」第69号(2010年10月22日)
第42回 モーツァルトのオペラ『魔笛』の魅力 - メールマガジン「すだち」第70号(2010年11月19日)
第43回 ベートーヴェンの歌劇『フィデリオ』の魅力 - メールマガジン「すだち」第71号(2010年12月21日)
第44回 黒澤明監督映画『虎の尾を踏む男達』(昭和20年東宝)の魅力 - メールマガジン「すだち」第72号(2011年1月24日)
第45回 内田吐夢監督『宮本武蔵』第一部(1961年東映) - メールマガジン「すだち」第73号(2011年2月18日)
第46回 内田吐夢監督『宮本武蔵』第二部「般若坂の決闘」(1962年東映) - メールマガジン「すだち」第74号(2011年3月22日)
第47回 内田吐夢監督『宮本武蔵』第三部「二刀流開眼」(1962年東映) - メールマガジン「すだち」第75号(2011年4月21日)
第48回 内田吐夢監督『宮本武蔵』第四部「一乗寺の決闘」(1962年東映) - メールマガジン「すだち」第76号(2011年5月20日)
第49回 内田吐夢監督『宮本武蔵』第五部「巌流島の決闘」(1962年東映) - メールマガジン「すだち」第77号(2011年6月17日)
第50回 不朽の映画『風と共に去りぬ』(1936年アメリカ) - メールマガジン「すだち」第78号(2011年7月19日)
第51回 ワーグナーの楽劇『ニーベルングの指環』四部作(1)前夜『ラインの黄金』 - メールマガジン「すだち」第79号(2011年8月24日)
第52回 ワーグナーの楽劇『ニーベルングの指環』四部作(2)第一日『ワルキューレ』 - メールマガジン「すだち」第80号(2011年9月20日)
第53回 ワーグナーの楽劇『ニーベルングの指環』四部作(3)第二日『ジークフリート』 - メールマガジン「すだち」第81号(2011年10月18日)
第54回 ワーグナーの楽劇『ニーベルングの指環』四部作(4)第三日『神々の黄昏』 - メールマガジン「すだち」第82号(2011年11月17日)
第55回 長井長義映像評伝『こころざし――密舎(せいみ)を愛した男――』鑑賞会 - メールマガジン「すだち」第83号(2011年12月21日)
第56回 篠田正浩監督(森鴎外原作)映画『舞姫』(1989年東宝) - メールマガジン「すだち」第84号(2012年1月20日)
第57回 ミュージカル映画『サウンド・オブ・ミュージック』(1965年アメリカ) - メールマガジン「すだち」第85号(2012年2月21日)
第58回 ドイツ・オペレッタ映画『会議は踊る』(1931年ドイツ) - メールマガジン「すだち」第86号(2012年3月16日)
第59回 映画『ローマの休日』(1953年アメリカ) - メールマガジン「すだち」第87号(2012年4月17日)
第60回 ウィリアム・ワイラー監督の映画『ベン・ハー』(1959年アメリカ) - メールマガジン「すだち」第88号(2012年5月17日)
第61回 ジェームズ・キャメロン監督の映画『タイタニック』(1997年アメリカ) - メールマガジン「すだち」第89号(2012年6月18日)
第62回 ヴィリー・フォルスト監督の映画『未完成交響楽』(1933年オーストリア) - メールマガジン「すだち」第90号(2012年7月17日)
第63回 マックス・ノイフェルト監督の映画『野ばら』(1957年オーストリア) - メールマガジン「すだち」第91号(2012年8月21日)
第64回 映画『禁じられた遊び』(1952年フランス) - メールマガジン「すだち」第92号(2012年9月18日)
第65回 プッチーニ歌劇『トスカ』 - メールマガジン「すだち」第93号(2012年10月18日)
第66回 プッチーニの歌劇『ラ・ボエーム』 - メールマガジン「すだち」第94号(2012年11月16日)
第67回 プッチーニの歌劇『蝶々夫人』 - メールマガジン「すだち」第95号(2012年12月17日)
第68回 プッチーニの歌劇『トゥーランドット』 - メールマガジン「すだち」第96号(2013年1月21日)
第69回 新田次郎原作の映画『聖職の碑』(昭和53年東宝) - メールマガジン「すだち」第97号(2013年2月19日)
第70回 ワーグナーの歌劇『タンホイザー』 - メールマガジン「すだち」第98号(2013年3月18日)
第71回 ワーグナーの歌劇『ローエングリン』 - メールマガジン「すだち」第99・100号合併号(2013年5月17日)
第72回 市川崑監督映画『つる 鶴』(東宝1988年) - メールマガジン「すだち」第101号(2013年6月17日)
第73回 ワーグナーの歌劇『さまよえるオランダ人』 - メールマガジン「すだち」第102号(2013年7月17日)
第74回 ワーグナーの舞台神聖祝祭劇『パルジファル』 - メールマガジン「すだち」第103号(2013年8月23日)
第75回 ヴェルディの歌劇『ナブッコ』 - メールマガジン「すだち」第104号(2013年9月17日)
第76回 ヴェルディの歌劇『イル・トロヴァトーレ』 - メールマガジン「すだち」第105号(2013年10月17日)
第77回 ヴェルディの歌劇『仮面舞踏会』 - メールマガジン「すだち」第106号(2013年11月18日)
第78回 ヴェルディの歌劇『ドン・カルロ』 - メールマガジン「すだち」第107号(2013年12月17日)
第79回 ヴェルディの歌劇『オッテロ』 - メールマガジン「すだち」第108号(2014年1月21日)
第80回 ヴェルディの歌劇『ファルスタッフ』 - メールマガジン「すだち」第109号(2014年2月17日)
第81回 黒澤明監督映画『影武者』(1980年東宝・黒澤プロ) - メールマガジン「すだち」第110号(2014年3月18日)
第82回 黒澤明監督の映画『乱』(1985年東宝・日本ヘラルド映画) - メールマガジン「すだち」第111号(2014年4月17日)
第83回 小津安二郎監督映画『東京物語』(1953年松竹) - メールマガジン「すだち」第112号(2014年5月19日)
第84回 山田洋次監督映画『東京家族』(2013年松竹) - メールマガジン「すだち」第113号(2014年6月18日)
第85回 山田洋次監督映画『学校』(1993年松竹) - メールマガジン「すだち」第114号(2014年7月17日)
第86回 山田洋次監督映画『学校Ⅱ』(1996年松竹) - メールマガジン「すだち」第115号(2014年8月21日)
第87回 山田洋次監督映画『学校Ⅲ』(1998年松竹) - メールマガジン「すだち」第116号(2014年9月17日)
第88回 山田洋次監督映画『十五才 学校Ⅳ』(2000年松竹) - メールマガジン「すだち」第117号(2014年10月17日)
第89回 山田洋次監督『幸福の黄色いハンカチ』(1977年松竹) - メールマガジン「すだち」第118号(2014年11月17日)
第90回 山田洋次監督『遙かなる山の呼び声』(1980年松竹) - メールマガジン「すだち」第119号(2014年12月17日)
第91回 映画『忠臣蔵』(1958年大映) - メールマガジン「すだち」第120号(2015年1月20日)
第92回 ミュージカル映画『レ・ミゼラブル』(2012年イギリス) - メールマガジン「すだち」第121号(2015年2月17日)
第93回 ウェーバーの歌劇『魔弾の射手』 - メールマガジン「すだち」第122号(2015年3月17日)
第94回 ワーグナーの楽劇『ニュルンベルクのマイスタージンガー』 - メールマガジン「すだち」第123号(2015年4月17日)
第95回 フンパーディングの歌劇『ヘンゼルとグレーテル』 - メールマガジン「すだち」第124号(2015年5月20日)
第96回 ビゼーの歌劇『カルメン』 - メールマガジン「すだち」第125号(2015年6月17日)
第97回 ヨハン・シュトラウスⅡ世のオペレッタ『こうもり』 - メールマガジン「すだち」第126号(2015年7月17日)
第98回 ジャン・コクトー原作・脚本の映画『永劫回帰(悲恋)』 - メールマガジン「すだち」第127号(2015年8月21日)
第99回 広末涼子出演の映画『鉄道員(ぽっぽや)』(1995年降旗康男監督) - メールマガジン「すだち」第128号(2015年9月17日)
第100回 山田洋次監督『男はつらいよ 寅次郎恋やつれ』(昭和49年松竹)(シリーズ第13作目)