【す だ ち】徳島大学附属図書館報 第92号
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○連載「知的感動ライブラリー」(65)

プッチーニの歌劇『トスカ』
総合科学部教授 石川榮作

イタリアのオペラ作曲家ジャコモ・プッチーニ(1858~1924)の歌劇『トスカ』(全三幕)は,フランスの劇作家ヴィクトリアン・サルドゥー(1831~1908)の戯曲『ラ・トスカ』を題材にしてオペラ化され,1900年1月にローマのコスタンツィ劇場において初演されたものである。作品の至るところに甘い旋律の名曲がちりばめられていて,しかも比較的上演しやすい作品ということもあって,わが国でもひんぱんに上演されていることは周知のとおりである。今年(2012年)9月25日(火)にもこのイタリア・オペラの傑作が徳島市立文化センターにおいてウィーンの森バーデン市劇場の来日公演として上演されることになっている。そこでこの機会に,このオペラ作品のあらすじの展開を辿りながら,見どころ・聴きどころなどを紹介することにしよう。


第一幕

舞台はナポレオン戦争で揺れ動いている1800年6月,ローマの聖アンドレア・デッラ・ヴァッレ教会内である。普通オペラによく付けられている序曲のようなものはこのオペラにはなく,いきなり管弦楽が「スカルピアの主題」を奏でながら開幕する。スカルピアとは権力を振りかざして悪事を働いているローマの警視総監である。冒頭でこの「スカルピアの主題」が奏でられたあと,横暴な警視総監スカルピアに苦しめられているナポレオン派の政治犯アンジェロッティは,牢獄から脱走してこの教会内に逃げ込んで来る。この教会内には彼の妹アッタヴァンティ侯爵夫人の同家の礼拝堂があり,その鍵を教会内の聖母像の足下に隠しているとの連絡を受けていたからである。アンジェロッティはなんとかその鍵を探し当てて,礼拝堂の中に姿を隠した。

そのあとこの教会の堂守が戻って来て,洗ってきた絵筆を画家のカヴァラドッシに渡そうとするが,彼の姿は見当たらない。しばらくしてやっとカヴァラドッシが戻って来て,絵画の覆いを取り去ると,彼が描きかけている聖マッダレーナ像が現れてくる。それは,先日この教会で必死になって祈り続けていた美しいアッタヴァンティ侯爵夫人の姿を彼がこっそりと盗み見て描いた,青い目と金髪の聖マッダレーナ像であったが,それが彼の恋人で黒い目をしていて黒髪の歌姫トスカとよく似ていることに気がついて,カヴァラドッシはアリア「妙(たえ)なる調和」を歌って,トスカへの変わらぬ愛を誓う。このアリアがまずは最初の聴きどころであろう。

やがて堂守が立ち去ると,そこへアンジェロッティが姿を現して,同じくナポレオン派の友人カヴァラドッシと再会する。カヴァラドッシはアンジェロッティが先程聖アンジェロ城の牢獄から逃げ出して来たことを聞き知り,逃亡の手助けをすることを約束するが,そのとき外から自分を呼ぶトスカの声が聞こえてきたので,自分の食事を与えて,ひとまず脱獄囚の友人をもとの礼拝堂の中に隠れさせておいた。

そこへやって来たトスカは,話し声がしていたので,誰かほかの女性とカヴァラドッシが一緒にいたのではないかと疑う。トスカは嫉妬深い女性のようである。彼女は彼の「君を愛している」という言葉に宥められて,気を取り直し,今夜は舞台で歌を歌うことになっているけど,短い出し物なので,すぐ終わるから,それが終わったら,二人で郊外の別荘へ行きましょうと彼を誘う。このときのアリア「緑の中で待っている私たちの家に行きたくないの」も聴きどころであろう。これに対してカヴァラドッシは同意を示すものの,彼は友人アンジェロッティが隠れている方を見ながら,「今は仕事をさせてくれ。急ぐ仕事だから」と答えて,彼女を追い返そうとする。苛立った気持ちでトスカが少しばかり立ち去ったところで,振り返ってみると,青い目をした金髪の女性の絵が目に入った。嫉妬深いトスカはその青い目には見覚えがあり,思い出しているうちに,その絵のモデルがアッタヴァンティ侯爵夫人だと見破って,また嫉妬してしまう。このように嫉妬深いトスカを宥めるようにカヴァラドッシは「この世に君の黒い目と比べられるものがあるだろうか」と歌い始める。この場面での二人による二重唱も特に甘くてプッチーニらしい情熱的な美しい旋律で,うっとりさせられてしまう。聴きどころであることは間違いない。カヴァラドッシの「君を愛している」という言葉に再度気を取り直して,トスカは絵画の女性の目を「黒色にしてね」と言いながら,そこを立ち去って行く。

トスカが立ち去ると,そこに再びアンジェロッティがカヴァラドッシの前に姿を現す。カヴァラドッシは彼に向かって,「恋人トスカは善良だが,信心深くて隠し事をしない女性なので,用心のため,彼女には内緒にしておいたのだ」と言ってから,友人の逃亡計画の相談に乗る。アンジェロッティによると,事件が事件なので,国外に逃亡するか,ローマのどこかに潜伏するかのいずれかであるが,彼の妹(アッタヴァンティ侯爵夫人)が祭壇の下に女性の衣裳とヴェールと扇子を隠しておいてくれているので,夜になったら,女装してここから脱出することにしたいという。これを聞いてやっとカヴァラドッシは,あの若くて美しい女性の祈りは兄に対する愛であったことを悟る。妹は極悪非道の警視総監スカルピアから兄を救い出すためにはどんなことでもしてきたようである。ここでカヴァラドッシも卑劣なスカルピアには反感を示しながら,命を賭けて友人アンジェロッティを守ることを誓うと,さっそく彼の隠れ家として自分の別荘を提供し,その鍵を渡す。夜まで待っていたら危ないので,女装しないでそのまま,ただちに逃げることにした。妹が用意してくれた衣裳などを持って外に出ようとするアンジェロッティに向かって,カヴァラドッシは「危険が迫ったら,庭の井戸の中にある洞穴に隠れるよう」指示するが,そのとき大砲の音がしたので,警視総監スカルピアが動き始めたことを察して,カヴァラドッシ自らが友人を案内して一緒に別荘へ逃げることにした。

二人がそこを立ち去ると,堂守のあとに続いて神学生たちが登場してくる。堂守によると,ナポレオンが敗走したので,今夜は盛大な松明行列とともにファルネーゼ宮殿では大きな夜会があり,そこでトスカが新しいカンタータを歌うことになったことを告げ,その準備に取り掛かるよう皆に命ずる。

そうして皆が大騒ぎしているところへ,冒頭のときと同じ「スカルピアの主題」が奏でられて,権力を振りかざす横暴な警視総監スカルピアがやって来る。彼は堂守にアッタヴァンティ家の礼拝堂を教えてもらい,そこを捜索すると,国事犯は逃げたあとであったが,しかし,アンジェロッティが置き忘れていったらしい扇子を手にした。扇子にはアッタヴァンティ侯爵夫人の家紋が刻み込まれており,またそこにあった絵が彼女の肖像であり,しかもそれを描いた者がトスカの恋人カヴァラドッシだと知る。さらにまたそこにトスカがやって来るのを目にとめると,スカルピアはこの扇子でもってトスカの嫉妬心を煽り,彼女を自分のものにしようと企み始めるのである。

そのトスカは,今夜,勝利の晩餐会でカンタータを歌うことになったので,約束どおり別荘には行けなくなったことを知らせに,ここに戻って来たのであるが,カヴァラドッシがいないので,また嫉妬心を見せながら,騙されたのかと,一瞬泣きそうになる。しかし,「いや,あの人が裏切るはずはない」と思ったところに,邪な心のスカルピアが彼女に取り入るようにやさしく声をかけてくる。彼はカヴァラドッシの絵とアッタヴァンティ侯爵夫人の扇子を見せて,トスカの嫉妬心を煽り立てる。トスカはカヴァラドッシが愛人を連れて別荘へ出かけたものと邪推して,そこへ向かう。スカルピアは3人の部下にトスカのあとを尾行するようにと命じる。テ・デウム(祝祭讃美歌)の合唱が始まる中で,スカルピアはトスカの恋人を処刑にして,トスカを強引に自分のものにしようという自らの欲望を歌い上げる。この「行け,トスカ」の歌を歌う場面で邪悪なスカルピアがどのようにその悪役ぶりを演じて歌い上げるか,そのときの合唱とともに,信心深いふりをするスカルピアの極悪人ぶりが見どころであり,また聴きどころでもあろう。最後にまた「スカルピアの主題」が奏でられて,第一幕の幕が下りる。


第二幕

第一幕と同じ日の夜,ファルネーゼ宮殿内にあるローマ警視総監スカルピアの執務室である。スカルピアは夕食を取りながら,「今頃は部下どもが2匹の獲物を捕えていることだろう」と企みをめぐらせている。窓を開けると,宮殿の下の階で行われている戦勝祝賀会でのガボットの演奏が聞こえてくる。そこにやって来た特警シャルローネに彼は,トスカがカンタータを歌い終わったら自分のところに来るようにと,急いで手紙を書いてもたせる。ここで邪悪なスカルピアの独白によって彼の欲望があらわになる。「自分は欲望を抱き,望んだものを追い求め,それに飽きたら,それを投げ捨てて,新たな餌に向かう」という彼の徹底的な悪役ぶりが演じられる。その悪役をいかに演じるか,重要な場面である。

密偵スポレッタが戻って来て,別荘では国事犯のアンジェロッティは見つからなかったが,画家カヴァラドッシを捕えて来たことを報告するので,ひとまずスカルピアは満足の吐息をもらす。そのとき下の階からは合唱団の演奏するカンタータが聞こえてくるので,トスカは戻って来ていることが分かる。

スカルピアの指示に従ってカヴァラドッシがこの執務室に連れて来られる。下の階では合唱団に合わせてトスカが歌っている声が聞こえてくる。スカルピアはカヴァラドッシにアンジェロッティの隠れ場所を白状するようにと迫るが,もちろん彼は打ち明けない。下から聞こえてくるカンタータの声に苛立ちを覚えて,スカルピアは窓を閉めに行く。アンジェロッティの隠れ場所を繰り返し問い詰めるが,カヴァラドッシは一向に白状しないままである。

このままではカヴァラドッシは「縛り首の刑,間違いなし」と,そばで密偵スポレッタが傍白したところへ,トスカが息せき切ってそこに現れる。カヴァラドッシはトスカに何も秘密を漏らさないようにと言い含めてから,別室に連れて行かれる。その別室で拷問を受けるのである。スカルピアは別荘での様子をしつこく聞いて,アンジェロッティの隠れ場所を白状するようにと強要するが,トスカは「別荘にいたのはカヴァラドッシ一人だけだった」と答える。スカルピアは別室で行われている拷問を続けるように命じて,トスカの心を動揺させようとする。別室からは拷問にかけられているカヴァラドッシの呻(うめ)き声が聞こえてくるので,ついに「庭の井戸の中」が隠れ場所であることを打ち明けた。この場面でのトスカの心の中の葛藤も聴きどころである。

カヴァラドッシは別室から連れ出されて来るが,トスカが友人の隠れ場所を白状したことを知って,彼女に怒りをあらわにする。そのとき特警シャルローネがやって来て,マレンゴでの戦いで勝利を収めたのはナポレオン側であったことを報告する。それを聞いたカヴァラドッシは,そのナポレオンの勝利を高らかに歌い始める。この「勝利だ! 勝利だ!…自由が湧き立ち,専制政治は崩壊するのだ」と叫びながらテノールの声で歌い上げる場面も聴きどころである。スカルピアはカヴァラドッシに絞首刑に処すことを言い付けて,彼を連れ去らせた。

執務室にはスカルピアとトスカだけとなり,トスカは身の代金はいくらなのかと尋ねるが,スカルピアは欲しいのは,そのように拒み続けるトスカだけだと答える。スカルピアが執拗に迫ってくる中で,遠くから死刑囚の護送を知らせる太鼓の音も聞こえてきて,トスカは苦しみに打ちひしがれたかたちで,アリア「歌に生き,恋に生き」を歌い始める。このアリアがオペラ『トスカ』の中でも最も注目すべき聴きどころであろう。横暴な権力者にもてあそばれるトスカの境遇に同情せずにはいられない。善良な彼女にどうしてこのような苦しみを与えるのか。すすり泣きながらトスカはスカルピアに屈することを余儀なくされる。このような彼女の苦しみにもかかわらず,スカルピアは依然と彼女を自分のものにしようと甘い言葉をかけ続ける。そのとき密偵スポレッタが戻って来て,「アンジェロッティは自殺してしまった」と報告する。この報告に対してもスカルピアは「死んだまま絞首台にぶら下げろ」と言ってしまうほどの悪役である。カヴァラドッシの方の絞首刑の準備はすでに整っていることを知ると,トスカはついにスカルピアの要求に従う決意をするが,その代りに恋人カヴァラドッシを自由の身にしてほしいことを願い出る。するとスカルピアは公然と恩赦を与えることはできないので,見せかけの処刑にすることにして,密偵スポレッタにカヴァラドッシに対しては「見せかけの銃殺」をするようにと命じた。銃には弾が入っていない見せかけの銃殺であるが,そのことをトスカは自分で恋人に伝えたいと申し出ると,明日の朝4時に密偵スポレッタがトスカを案内して行くことになった。さらにトスカは見せかけの銃殺のあと,カヴァラドッシと一緒にこの国から抜け出したいので「国外への通行許可証」も用意してほしいと願い出た。一時の欲望のためにどうしてもトスカを自分のものにしたいスカルピアは,その要求に応えるように,机に向かい,通行許可証を書き始めた。その間,トスカは食卓に近づくと,その上にナイフを見つけ,それを手に取り,自分の後ろに隠し持った。通行許可証を書いて,印を押すと,スカルピアは「とうとうトスカは俺のものだ」と言いながら,両手を広げて,彼女を抱きしめようとした。その瞬間,トスカは彼の胸にナイフを突き刺した。「これがトスカのキスよ」と叫ぶトスカには,恐怖を覚えてしまう。トスカに鬼気迫る演技と歌が求められる場面である。スカルピアは息を引き取ってしまう。トスカは通行許可証を手に取ると,「この男の前ではローマ全体が震えあがっていたのだわ」と言いながら,彼の死体の周りに燭台を置いて,胸の上には十字架を置いて,その執務室を立ち去って行く。


第三幕

夜明け前,3時の聖アンジェロ城の屋上である。一人の少年によって片思いの気持ちを内容とする歌が歌われると,やがてカヴァラドッシが,のちに歌われるアリア「星は光りぬ」のメロディとともに,兵士に連れられて登場し,看守に引き渡される。カヴァラドッシは恋人トスカにあてて別れの言葉を手紙に書くことを許してほしいと,看守に願い出て,そのお礼として唯一の財産である指輪を差し出す。それが承諾されると,カヴァラドッシはトスカとの思い出に浸りながら,手紙を書こうとするが,途中で書けなくなってしまう。そのときに歌うのが有名なアリア「星は光りぬ」である。「今ほど自分の命をいとおしんだことはない」の歌詞で終わるこのアリアも,もちろんこのオペラの最も注目すべきものの一つである。第二幕で歌われるトスカの「歌に生き,恋に生き」と双璧のアリアであると評してもよいであろう。いずれも横暴な権力者の犠牲となったあわれな境遇に同情を寄せずにはいられない。

カヴァラドッシが両手で顔を覆って,すすり泣いているところに,トスカが密偵スポレッタに案内されて,この屋上にやって来る。トスカはカヴァラドッシと二人きりになると,国外への通行許可証を見せて,彼が自由の身になったことを知らせる。そして彼女はスカルピアを殺したことを打ち明けたあと,これから行われる銃殺は「見せかけ」なので,撃たれたら,倒れる演技をするだけでよいことを説明する。この場面で二人は愛の勝利を高らかに歌うが,この場面も聴きどころであろう。

やがて看守が処刑の時間がきたことを知らせる。トスカは「うまく倒れるのよ」と言えば,カヴァラドッシはそれに微笑んで「舞台のトスカのようにね」と答える。するとトスカは「笑わないで」と要求すれば,カヴァラドッシは真顔になって「こうかい?」とそのしぐさをするので,「そうよ」と言いながら,脇に退いて行った。いよいよ銃殺刑が行われることになって,銃殺隊が銃を持って立ち並ぶ中,カヴァラドッシは壁の前に立たされる。トスカがそのさまを歌って聞かせるが,観客にはドキドキハラハラさせられる場面である。銃殺隊の構える銃が一斉に放たれると,トスカはカヴァラドッシにうまく倒れるようにと合図する。彼が倒れたのを目にすると,「いい役者だわ」とほめ称える。しかし,銃殺隊が立ち去って,倒れた彼のそばに急ぐと,なんと彼は本当に銃殺されていたのであった。邪悪なスカルピアは空砲の銃で「見せかけの銃殺」にすることを約束しながらも,最初からその約束を果たすつもりはなかったのである。このオペラではスカルピアは完全な悪役に徹していると言ってもよいであろう。本当に銃殺されて倒れている恋人カヴァラドッシにもたれかけてトスカが泣き叫んでいるところへ,遠くから警視総監スカルピアがトスカに刺殺されたことを告げる声が聞こえてくる。密偵スポレッタが屋上に駆けつけて来ると,トスカは聖アンジェロ城の城壁の上から身を投げて自殺する。そのときカヴァラドッシのアリア「星は光りぬ」の旋律が奏でられて,幕が降りる。


以上のとおり,このオペラのストーリーはなんとも恐ろしい人殺しを中心としたものであり,邪悪な警視総監スカルピアの殺害をはじめ,その悪人の策略による画家カヴァラドッシの銃殺,政治犯アンジェロッティの自殺,そして主人公トスカの飛び降り自殺というように,主な4人の登場人物は皆,悲惨な最期を遂げることになっている。ストーリー自体はなんとも恐ろしい悲劇であるが,しかし,その悲劇の極限状態に置かれた中で登場人物たちの心の葛藤や欲望や嫉妬が見事に歌い上げられて,すばらしいオペラとなっている。とりわけトスカとカヴァラドッシのアリアや愛の二重唱では,プッチーニらしい甘い旋律が奏でられて,その追い詰められたあわれな境遇には涙を流さずにはいられない。そこにこのオペラの人気の秘密があるのであろう。また政治犯アンジェロッティの妹であるアッタヴァンティ侯爵夫人はこのオペラにはまったく登場せずに,画家カヴァラドッシの絵画にその肖像が表現されているだけであるにもかかわらず,重要な役割を果たしている扇子などを通じて,観客になんらかの強いイメージを与えて,とても重要なユニークな存在だと思われる。そのほか第一幕でカヴァラドッシのセリフにコミカルなセリフを差し込む堂守の存在も,また第三幕冒頭で片思いの歌を歌う少年の存在も印象的である。身震いせずにはいられない恐ろしいあらすじの中にも甘い旋律がちりばめられていて,全体的に完成度の高いオペラであると評してもよいであろう。是非,この機会にプッチーニの傑作オペラ『トスカ』を鑑賞していただければと思う。


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