【す だ ち】徳島大学附属図書館報 第97号
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☆全学共通教育講義「iPadで育てるグローバル学習戦略」講義録

図書館では、前期に引き続き後期も、iPadを用いた全学共通教育の授業「iPadで育てるグローバル学習戦略」において、3コマを担当することになりました。

講師陣は前期と同じ、吉田敦也先生、斉藤隆仁先生、依岡隆児先生、図書館からは佐々木、溝木(技術サポート)です。


この授業では、



を大きな目標としています。


その中でも、「グローバルな視点」を形成する、ということが多くの授業のテーマとなっていました。

それぞれの先生の得意分野により、世界の大学の「大学アプリ」を使ったり、TEDカンファレンスの動画を視聴し、それぞれのおすすめのプレゼンをを紹介したり、留学生と交流したり・・・。


TEDカンファレンスはこちら


あるいは、社会に向けて発信する、ネットワークを拡大する、ということを目指し、それぞれブログを開設するということも行いました。


その時につくったブログはこちら


そしてその中で、「ソーシャル・リーディング」ということも行いました。


「ソーシャル・リーディング」とは?


というようなラインナップの中、図書館は、何をしよう?と考えた末、次のようなタイトルで授業を行いました。




このタイトルで、どんな授業が行われたのか・・・順を追ってご紹介します。



●1回目「図書館は出力自在な記憶装置である」


ここでいう「出力自在」とは「図書館は、膨大な情報の中から、必要な情報を探し出せる機能を持つ。」ことを、「記憶装置」とは「図書館は、冊子やデジタルコンテンツなどに固定された人類の知識を保存し、未来へ継承する。」ことを示します。


というわけで行ったのは、図書館案内ツアーと資料の紹介、資料の検索方法の紹介です。


なんだ、普通の講習会じゃん!と思われるかも知れませんが、少し違うのは、資料の媒体の変遷を追って説明したこと。

例えば、当館所蔵の貴重資料『蜂須賀家家臣成立書并系図』は和装本ですが、これをマイクロフィルム化して保存し、そこから複製したものを製本して一般の方も自由に読むことが出来る状態にし、さらに「蜂須賀家家臣団家譜史料データベース」としてインターネット上でも検索・閲覧できるようにしています。

これなどは、様々な技術の発達と相まって保存形態を変遷させ、その時々で最良と思われる状態で保存や利用を行ってきた例です。


「蜂須賀家家臣団家譜史料データベース」はこちら


また、資料の検索方法についても、今のデータベース検索だけではなく、以前使われていたカード目録や冊子の目録、索引誌の実物を示しながら、現在のOPACやデータベースへと発展してきたことを説明しました。


この授業の狙いは、人間がこれまで、どのように知識を継承しようとしてきたかについて思いを巡らせ、大学で学ぶということは、そういう先人たちの贈り物を受け取り、次世代へ受け継いでいくことである、ということを考えてみよう、ということです。

そして、図書館はその贈り物の宝庫だから、どんどん使いましょう、ということ。どのくらい、この意図がみなさんに伝わったかな?



●2回目「図書館は、時間と場所を超えて知識をつなぐ」


図書館には、過去からずっと引き継いできている資料があり、自館にないものは、国内・海外から取り寄せることができるネットワークがあります。

それが、「図書館は、時間と場所を超えて知識をつなぐ」。

この回では、図書館にない資料を取り寄せるネットワーク(NIIが提供するILLシステム、OCLC)、レファレンス(図書館が資料や情報を探すお手伝いをするサービス)の事例を収集したデータベース「レファレンス共同データベース」などを紹介しました。


レファレンス共同データベースはこちら

さらにワークとして、百科事典・辞書・ニュース・学術サイトURL集などを集積した知識データベース「JapanKnowledge+」を用いて調べものをすることにしました。

題して「あなたのソボクな疑問は何ですか? 解決してみよう!」


ところが、やってみた結果、「JapanKnowledge+」だけでは上手く解決できなくて、結局インターネットで検索する方が早いという結果になりました。ソボクな疑問の内容が「googleで出口と検索をかけるとYahooが出てくる理由」だったりすると、「JapanKnowledge+」で探すのはムリですね・・・。想定外の疑問続出の授業でありました。

でも、疑問は疑問のままにせず調べてみると面白い、ということは体感していただけたのではないでしょうか。



●3回目「ビブリオ・バトル+電子ブックトレンド講演会」


3回目は、電子ブックトレンド講演会講師の一人、宮城教育大学附属図書館の吉植庄栄さんをお迎えし、「ビブリオ・バトル」を行いました。


ビブリオバトルとは、みんなで集まって5分で本を紹介。そして、読みたくなった本(=チャンプ本)を投票して決定する、スポーツのような書評会です。

ビブリオバトル公式サイトより)。


皆それぞれ、自分がオススメしたい本を持って、バトルに臨みました。ビブリオバトルは、5分というのが絶妙で、うまくまとめるのがなかなか難しいものです。この本が好き、ということをいかに表現するか、自分の思いを表現することの難しさと楽しさを体験しました。

そして、この授業で特筆すべきは、Skypeで、宮城教育大学の学生、貝森義仁さんと交流したこと!

貝森さんは、「ビブリオバトル首都決戦2012」の最終バトラーであり、宮城でビブリオバトルを行う団体を立ち上げた方で、吉植さんの知り合いです。こうしてネットワークは広がっていく、という好例ですね。


この授業は、一つの知識を深めるというよりは、世界に様々に存在する知をいかにつなぐか、その知をいかに利用し、自分のものとしていくか、ということを、様々な角度から考え、体感する授業でした。

私にとっては、課題設定が甘かったり、授業を受けた学生さんがどの程度理解できたか、今後活用できそうか、というフィードバックを上手くできなかったり、と足りないところが後から後から出てきて、知識不足、力量不足を痛感する授業でした。

ただ、この授業に携わっていなかったら全く知らなかった知識を得、やろうと思わなかったことを実践することができたのは、大きな収穫です。

職員ですらそうなのですから、若くて吸収力のある学生さんにとっては、さらに大きな収穫があったに違いありません。



最終日、授業が終わると学生、教員、職員全員から自然に「お疲れ様でした」という言葉が出、拍手が起こりました。

このことがすべてを物語っていると思います。

以上、最初から最後まで型破り(?)な授業の報告でした。


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