【す だ ち】徳島大学附属図書館報 第70号
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○大分県立先哲史料館が開催した秋季企画展
 「伊能忠敬、大分を測る―大分測量二百周年―」

大分県立先哲史料館主任研究員 村上博秋氏寄稿 (2010/11/08)

文化7年1月22日。それは,伊能忠敬が測量のために初めて大分県域に入ってきた日です。文化7年は西暦1810年。つまり今年は,伊能忠敬の大分測量からちょうど200年目に当たります。私はかねてより,それを記念した企画展を開催したいと考えていました。今回その念願がかない,秋季企画展「伊能忠敬、大分を測る―大分測量二百周年―」(平成22年10月9日~11月23日)を開催することができました。
200年前の大分測量の様子は,大分県内に残る古文書や古記録からもうかがえます。しかし,せっかくの企画展ですので,やはり県外の魅力的な資料もお借りして紹介したいと考えました。そこで候補にあげたものが,2つありました。そして,ともに快くご協力いただきました。
その1つは,広島県の個人が所蔵し,呉市入船山記念館に寄託される「浦島測量之図」(うらしまそくりょうのず)です。全国にわずかしか残っていない伊能測量隊の測量風景を描いた絵で,その中でも最も有名なものです。そして,もう1つが,徳島大学附属図書館が所蔵する「伊能図」です。
伊能忠敬の全国測量は精緻な地図にまとめられ,それは伊能図と呼ばれています。江戸幕府に提出された正本とも言うべき伊能図は,すでに焼けて失われていますが,大名家の依頼によって作製されたものなどが,現在まで伝えられています。
中でも,縮尺3万6千分の1で描いたものを「伊能大図」と言います。徳島大学附属図書館所蔵の伊能図は,徳島藩主蜂須賀家の依頼によるものだと思われますが,その中の伊能大図は,徳島県域ではなく大分県域を描いたものです。「豊前国沿海地図」と題され,正確には,山口県から福岡県を描いた1枚と,大分県中津市から国東市までを描いた1枚,さらに国東市から大分市までを描いた1枚と,合計3枚から成ります。保存状態も良好で美しく,大分県民にとっては非常に楽しく見ることができる資料です。
また,徳島大学附属図書館には,縮尺21万6千分の1の「伊能中図」が所蔵されます。その中の九州部分を描いた図「大日本沿海図稿 西海」も,今回お借りした資料の1つです。これもまた,質の高い伊能図と評されているものです。伊能大図とともに,同様のものが東京国立博物館に所蔵されますが,それらは重要文化財に指定されています。
そのような貴重な資料をお借りして展示できたことはもちろんですが,それが来館者に非常に好評(と私は思っています)であることは,先哲史料館としても,また私個人としても大きな喜びです。本館の展示室は入場無料です。ということは,企画展とは言え,多額の予算を準備することはできません。そのような中で今回の企画展を開催できたのは,資料所蔵者を始めとする,多くの方々のご協力があったからこそです。その意味でも,徳島大学附属図書館へは感謝の気持ちでいっぱいです。

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