【す だ ち】徳島大学附属図書館報 第64号
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○<不定期連載> 読書Fun!~司書Sが楽しく読んだ本をご紹介します(第4回)

私は数学が苦手です。“算数”のレベルでもあやしいくらいです。
その私がなぜ『フェルマーの最終定理』などという,とても難しそうな数学の本を読もうと思ったかというと,私の好きな作家のエッセイの中で絶賛されていたからです。「そうか,あの人が面白いというなら私にも読めるかも」という若干 不純な動機ではありました。
読んでみた結果は・・・大正解!

この本のテーマは,17世紀以来解決されなかった数学の大問題「フェルマーの最終定理」がいかにして解決されたか,です。数学の専門的な用語はちらほら出てきますが,何故かそれらの意味が読んでいるうちに分かってきます。
それは,数学の問題を数式で説明するのではなく,どのような思考経路でそこに至るのか,その概念を説明しているからです。
これまで字面しか知らなかった「位相幾何学」「遺伝アルゴリズム」などの用語が突然意味をもち,頭の中にストン,ストンと納まっていくあの楽しさ。
(いやしかし今この言葉を説明しろといわれてもちょっと困りますので,質問しないように)
加えて,「フェルマーの最終定理」解決に必要な数学理論が数多く紹介され,それがまるでジグソーパズルのピースをはめ込んでいくように組み合わされていくので,「なるほど!」と何度も頷いてしまいます。
つまりこの本を読めば,一度に何冊もの本を読破したような満足感とともに「知らないことを知る」ことの楽しさ,知的興奮を得ることが出来るのです。

また,この問題に関わった多くの数学者が取り上げられているため,ちょっとした「プロジェクトX」的な,「プロフェッショナル仕事の流儀」的な興味で読み進めることができることもこの本の魅力です。
例えば,図書館でもよく図書をお見かけする数学者「ガロア」がフランス革命後の政治紛争に関わり,20歳の若さでこの世を去ったことなど,この本で初めて知りました。

こんな充実した本を読んだときはいつも,読み終えるのが惜しくて,そしてこの本に関する情報をもっと知りたくて「あとがき」を読むのを楽しみにしています。
するとここに驚くべき情報が!
なんと徳島大学の片山真一先生がこの本に関わったとあるではありませんか。
身近にこんな素晴らしい本に関わった人がいるなんて,誇らしくてうれしくなりました。

この本は2000年に話題になり,ネット上の「ベストサイエンスブック2000」の1位にもなったそうですから,すでに読んだ方も多いと思います。
まだ読んでない方,ぜひ「あとがき」までじっくりお読みください。


「フェルマーの最終定理」の情報
書名:フェルマーの最終定理(新潮文庫;シ-37-1)
著者名:サイモン・シン 著 青木薫 訳
出版社:新潮社 出版年:2006年6月

所蔵情報
所在:徳島大学附属図書館本館2階東閲覧室
   請求記号:412.2||Si 資料ID:2060020736 ほか2冊

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