蜂須賀家家臣団家譜史料データベース

近世大名(蜂須賀家)家臣団家譜史料「成立書」について

徳島大学名誉教授 桑原 恵

 徳島大学附属図書館には、江戸時代に有数の国持ち大名であった蜂須賀家ゆかりの史料がいくつか収蔵されています。すでにホームページでも公開されている絵図史料もその一つですが、そのほかにも蜂須賀家の家臣たちの家の系譜を知ることの出来る史料として「蜂須賀家家臣成立書并系図」という一群の史料があります。この史料は、蜂須賀家が家臣に対して、それぞれの家の系譜を書き上げさせたもので、多くは天保5年(1834)に作成され、その後文久元年(1861)に書き継いで提出されたものです。ただ、中には寛政年間に提出されたものも含まれており、提出時期とその目的については今後検討していく必要があります。また明治期に入っても何度か書き継いで提出されています。明治期に提出されたものについても、その作成目的に関しては今後の検討が必要となるものと思われます。

 成立書を提出した家臣は、家老などの重臣から無足人と呼ばれる下級の家臣まですべてです。そのなかで、重臣の家譜にあたるものは藩主個人の家に所蔵されて現在に至っており、最下級の家臣についての部分は国文学研究資料館(大学共同利用機関法人人間文化研究機構)に所蔵されています。したがって、本学の附属図書館に所蔵されている史料は、最上級の家臣と最下級の家臣を除く家臣団の家譜と言えます。その意味では、家臣団の中枢を占めていた家臣団についての系譜を知ることが出来る史料なのです。

 蜂須賀家は、よく知られているように尾張出身で尾張で勢力を伸ばし、その後播磨の竜野の領主となり、阿波の藩主となって明治まで阿波と淡路を支配していました。従って家臣の中には尾張出身、竜野出身、さらには阿波出身のものがいます。この「成立書」には各家の初代が誰で、どこの出身であるかを始め、いつ頃からどのような役職を勤めたか、拝領した禄高、養子の場合の実父、婚姻関係までが詳細に書き記されています。また、各家の家譜の記述の最後には系図が付けられ、その後には家紋が描かれています。

 以上述べてきたことからもおわかりのように、この「蜂須賀家家臣成立書并系図」という史料は、江戸時代の徳島藩の家臣に関する貴重な情報が記録されたものであると言えるのです。このような情報満載の史料ですので、その利用範囲も多岐に亘ります。図書館では、平成17年度に科学研究費補助金の交付を得て、この史料についてデータベース化を進めました。今回の作業では、 成立書に記載された各家の当主の名前を取り出して検索可能にしています。例えば、古文書などで姓のみや名前のみしか記載されていない場合でも、家臣であれば、姓もしくは名前から該当する可能性のある家の成立書のページを知ることができるようになっています。このような検索を容易に行うことができれば、上述した豊富な情報の利用もよりスムーズに行うことが可能となります。

 今後は、データベースの公開を進めると共に、検索情報を増やすことによって、さらに広汎な利用を可能にしていきたいと考えています。

(2007.12)