【す だ ち】徳島大学附属図書館報 第165号
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○巻頭エッセイ(17)

公共図書館と大学図書館
総合科学部 平井松午

少し旧聞になりますが,昨年度(2017年度),徳島県立図書館が創立100周年を迎え,1年あまりにわたって各種の記念事業が行われました。私も徳島県立図書館協議会会長を務めていたことから,11月5日には徳島県知事・徳島県立図書館長と一緒に100周年の記念式典テープカットの大役を仰せつかりました。

徳島県立図書館は,1916年(大正5年)7月24日に創立された徳島県立光慶図書館が前身です。大正天皇の即位大礼を記念する事業として設置されたことから「光慶」という名称が付され,翌1917年6月24日に現在の徳島中央公園の城山南に開館しました。当時の蔵書数は約1.5万冊で,その中には蜂須賀家旧蔵の「阿波国文庫」も含まれました。しかしながら,それらの蔵書の大半は,1945年(昭和20年)6~7月の空襲や1950年3月に起きた光慶図書館後継の憲法図書館の火災によって焼失してしまいました。

そのため,1953年11月3日に徳島中央公園の跡地に新たに徳島県立図書館が再建されました。1982年4月に徳島大学に着任した私も,徳島大学常三島キャンパスに近い県立図書館には何度も通いました。急遽再建されたこともあってか,県立図書館としては狭かったのですが,立地場所が良いこともあって,受験を控えた高校生や一般利用者でいつも賑わっていました。

そうした経緯のもと,新たに整備された「文化の森」構想の下に,1990年(平成2年)11月3日に徳島県立図書館がリニューアルオープンしました。同時に,県立二十一世紀館,博物館,美術館,文書館もオープンし,「文化の森」は徳島県民の文化の拠点としての役割を担うことになりました。ちなみに,県立文書館は1930年に竣工した旧徳島県庁舎の正面玄関を移築したものです。ただ,「文化の森」は市街地南の八万町に位置するため,中央公園の県立図書館を利用できた徳大生にとっては少し縁遠くなった感もあります。

「文化の森」に開設された県立図書館の閲覧スペースは開架方式で広く,様々な本や雑誌を直接手に取って見ることができる親しみやすさがあります。現在,徳島県立図書館には約145万冊の図書資料があり,年間利用者数は42万人で,毎年17万人以上の貸出利用者があります。これに対して,徳島大学附属図書館は本館・分館合わせて蔵書数が約66万冊,年間約4万人前後が貸出利用しています(数値はいずれも2017年度)。

もちろん,徳島県立図書館のような公共図書館と大学図書館とでは,その役割が異なります。徳島県立図書館は一般図書の受入のほか,県内市町村立図書館や学校図書館(室)との連携・支援活動,県下の読書グループや読み聞かせ会などの支援,逐次刊行物・地方行政資料の受入,障がい者・高齢者向け対応など,その業務は多岐にわたります。これに対して,大学図書館は教職員・学生の教育研究支援を目的に,多様な学術図書やジャーナルの受入,授業サポート,学外図書・雑誌などの貸出サービスなどに取り組んでいます。近年は,社会貢献の一環として徳島県立図書館や徳島市立図書館などとも連携しています。ただし,県立図書館・大学図書館ともに近年は予算が縮減してきていて,図書・雑誌の購入などの面で支障も出てきています。

他方で,こうした県立図書館・大学図書館の役割も少しずつ変わってきています。地域の中核的な公共図書館である県立図書館には,県民に対する情報収集・発信の場としての役割が求められつつあります。他県では,県立図書館を社会生活・医療などの情報拠点として様々なサービスを提供しているところもあります。「図書館へ行けば何でもわかる」(知の宝庫)というのは,本来の図書館の使命でもあります。徳島大学附属図書館でも現在,「オープンアクセス推進」の下に大学の知的財産や学術情報の情報発信に力を入れています。図書館施設のこうした活動が,今後ますます教育研究活動や社会生活のさらなる向上につながることを期待するものです。


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