【す だ ち】徳島大学附属図書館報 第163号
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○ジョン・オージェリ氏トークセッションを開催しました

7月10日(火),図書館本館にて,「ジョン・オージェリ氏トークセッション:大学教育におけるラーニング・コモンズの役割~アクティブ・ラーニング,ICTをトピックとして~」を開催しました。

このセッションについては,すでに大学ホームページで報告しておりますが,開催にいたった経緯や成果など,もう少し詳細に報告します。


ジョン・オージェリ氏は,パリ・デジタル大学共同創設者兼副所長で,現在は,学習空間(ラーニングスペース)の研究を集中的に行っています。世界各国で訪問調査を実施するとともに,日本にも何度も来日して調査されており,その中で当館のラーニング・コモンズにも調査希望の連絡をいただきました。

調べてみると,オージェリ氏は,調査に訪れた大学でしばしば講演会やセミナーを開催し,調査対象となった図書館や関係者にご自身の最新の知見を紹介してくださっているようでした。今回も,せっかくなのでそのような場を設けてもよいか,と打診したところ,ご快諾いただき,セッション開催の運びとなったわけです。

セッション開催,となるとどんな内容にするかを考えなくてはなりません。せっかく第一人者に来ていただけるのですから,ただお話を聞くだけではもったいない。多くのラーニング・コモンズを見てきたオージェリ氏から見た当館のラーニング・コモンズの現状についての感想,改善点,ICTへの取組のヒントなど様々にアドバイスいただく,というのはどうか,そういった内容なら,図書館だけで考えるのではなく,関心のある先生方や学生,他の大学の図書館の職員の方とも一緒に考える機会になった方がいいのではないか・・・。というようなことを館内で相談した結果,FDとして開催してはどうか,ということになり,今回,総合教育センターにご相談して,全学FDとして開催できることとなりました。加えて,教職員や学生のスキルアップの機会とするため,通訳なし,全編英語のセッションにチャレンジすることになりました。


7月10日(火)当日は,ラーニング・コモンズの案内から開始しました。

せっかくの徳島来県ですので,鳴門教育大学附属図書館にもお声がけし,鳴門教育大学附属図書館,徳島大学附属図書館蔵本分館,徳島大学附属図書館本館,と順に見学いただきました。見学の間もオージェリ氏から様々なコメントをいただきましたが,この見学をふまえて午後からのセッションにのぞみます。


午後のセッションでは,まずオージェリ氏からご講演いただきました。国内外のラーニングスペースの事例から得られた学習空間の類型(Active Learning classroom, Collaborative Lecture Halls, Learning Commons, Learning Centers)や,海外と日本のラーニングスペースの違い(可動式什器-固定什器,ハイテク-ローテク,この二つを軸に各国の傾向を説明),BYOD(Bring your own device)への移行の状況,学生が学習空間に求めていること,学生の利用動向など興味深い話を紹介いただきました。特に,「学生はラーニングスペースに,「Power+Wi-Fi」「Food & Drink」「Cozy Space」を望んでいる」との調査結果については,普段の学生の様子からみて改めて納得できる内容だと思ました。

トークセッション
トークセッション

続いて質疑応答セッションにうつりました。

まず,当館の職員が,当館のラーニング・コモンズの特徴について,学生協働やサービス内容など,見学しただけではわからない内容を中心に,「学習空間としての徳島大学附属図書館」というタイトルで“英語”でプレゼンを行いました。

プレゼン

その後,当館のラーニング・コモンズに関し,次の2点についてオージェリ氏にアドバイスを求めました。

①他の大学と比較して当館のラーニング・コモンズの印象はどうか

②どうしたらより良い学習空間を提供できるか


その結果次のようなコメントをいただきました。

①他の大学では,施設・設備がよくても学生が利用していないケースがあるが,徳島大学附属図書館は多くの学生が利用しており,ポテンシャル(潜在的可能性)がある。

②デジタルコーナーやフォーマルな(授業で利用するような)アクティブラーニングクラスルームがあればよいのではないか。(そういったスペースをどうやって作るのかという質問に対し)そのようなスペースの捻出が難しい場合,英語圏では,e-bookを導入し書架を撤去するなどして対応することができるが,フランスや日本ではあまりにもデジタルコンテンツが少なく,紙の本をなくすことは難しいだろう。もっと簡単な取組としては,飲食の制限を緩和してはどうか。


質疑応答セッションでは,参加者からも活発な質問があり,セッション後には,参加者の教員とともに図書館外の学習スペースを見学されるなどの交流もありました。

参加者アンケートでは約8割の方から満足とご回答いただきました。また,図書館活用に限らずご自身の関心にひきつけて考える機会となったことが分かるようなコメントをいただくなど,示唆に富んだセッションとなったと思います。


今回のセッションには,教員7名,学生1名,他大学図書館職員3名,図書館職員9名,と様々な立場の方に参加いただきました。

実は,オージェリ氏からは1年以上前にも来館調査の希望があったのですが,その際は,こちらの体制が整わず,お迎えできなかった,という経緯があります。

今回,時間をおいたことで準備をすることができ,最終的に全学FDの企画として図書館以外の方にも参加できるような場をつくることができました。その結果,図書館のラーニング・コモンズを含む大学の学習スペースについて,様々な視点から考えていただく機会となりました。その中で,オージェリ氏から「図書館にラーニング・コモンズがあることの意義」について,「資料があるところにラーニング・コモンズを作るのが,学生の動向から見ても適切だ」と述べていただいたことは意義深かったと感じています。

他の大学よりもよく使われている,というコメントに力づけられつつ,より良い学習空間の提供に向けて工夫していきたいと感じられるセッションでした。

ご講演いただいたジョン・オージェリさん,ご参加いただいた皆様,ありがとうございました。




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