【す だ ち】徳島大学附属図書館報 第158号
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○巻頭エッセイ(10)

「金曜の会」について
総合科学部教授 依岡隆児

徳島大学で読書サークルがブックリストを作っているのを御存じでしょうか。そのサークルとは、私も参加している「金曜の会」なのですが、年齢も職業も違う人たちが定期的に顔を合わせて議論しながら本を選ぶという点では、なかなかユニークです。もともとは、3年前に本学総合科学部の地域交流プロジェクトの一環で、ブックリストを作ることになったときに、参加してもらった社会人、大学の教員・図書館員、学生によって始まった集まりです。ブックリストを刊行することを目的としていましたが、それ以外にも集まろうということで、原則、毎月第3金曜日の夕方に徳島大学附属図書館カフェテリアで、さまざまな読書活動を行ってきました。毎回10人から20人のひとが参加しています。

平成27年度は、社会人・学生・教員・図書館員の21名で「徳島読書人が選ぶ最高の31冊」ブックリスト作成しました。月1回程度の例会で、推薦図書を紹介しあう作業を重ねてから、最終的には参加者の相互投票で31冊を選出し、冊子体として製本して、県下の図書館、高等学校、文学書道館などに配布しました。翌年には第2弾として、「徳島読書人が選ぶこだわりの31冊」を発刊できました。

ブックリスト ブックリスト

ブックリスト(2016年)


参加者の感想としては、「リラックスした雰囲気で楽しく作業できた」、「読書の幅が広がった」、「新しい出会いがあった」、「異世代間交流になった」、「読書する刺激を受けた」というのがありました。堅苦しい勉強会ではなく、知的な刺激と楽しい交流のある集いとして機能しているようです。

3年目の今年度は、夏ごろからブックリスト作業に入り、毎回テーマを決めて、各自が3冊までの本を持ち寄り、紹介し合うこととなりました。6テーマで選書するため、1月までこの作業が続き、その後メンバーからそれぞれの推薦リストを寄せてもらってから、ひとつにしたものを再度全員に送って投票しました。

2月の例会では、今回の冊子の題名を「徳島読書人が選ぶ魅惑の31冊」と決め、6テーマで5~6冊を選書、それぞれに推薦コメントを付ける人を選びました。推薦者は250字から300字で書き、著者名、著書名、出版社名を記入することとしました。

以下、6つのテーマごとに選書された本を紹介します。


1「音楽の本」

三島由紀夫『音楽』、タンストール『世界でいちばん貧しくて美しいオーケストラ』、パリッコ『海の上のピアニスト』、恩田陸『蜜蜂と遠雷』、小山慶太『寺田寅彦』


2「美術の本」

赤瀬川原平『鵜の目鷹の目』、加藤浩子『音楽で楽しむ名画 フェルメールからシャガールまで』、エルンスト『エッシャーの宇宙』、アンデルセン『絵のない絵本』、梅原真『ありえないデザイン』


3「動物・生き物の本」

吉村昭『羆嵐』、ローレンツ『ソロモンの指輪』、前野ウルド浩太郎『バッタを倒しにアフリカへ』、ケストナー『動物会議』、ローベル『ふたりはともだち』、ギャリコ『猫語の教科書』


4「悪の香りの本」

谷崎潤一郎『鍵・瘋癲老人日記』、スタインベック『エデンの東』、『ラ・ロシュフコー箴言集』、『サキ短編集』、澁澤龍彦『毒薬の手帖』


5「異世界の本」

柳田国男『遠野物語、山の人生』、チュツォーラ『やし酒飲み』、吉田知子『お供え』、泉鏡花『夜叉ヶ池・天守物語』、ボルヘス『幻獣辞典』


6「古典」

ブラッドベリ『華氏451度』、プラトン『ソクラテスの弁明』、トウエン『ハックルベリ・フィンの冒険』、マイヤー=フェルスター『アルト=ハイデルベルク』、島津忠夫『新版 百人一首』


このユニークな集いによるブックリストは、この3月末に刊行できそうです。その節には附属図書館の方に置いてもらいますので、ぜひお手に取ってご覧ください。


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