【す だ ち】徳島大学附属図書館報 第155号
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○巻頭エッセイ(7)

読書のコミュニケーションを広げよう!
総合科学部 依岡隆児

最近、都会では読書会が流行っています。若いサラリーマンやOLが仕事の前後に集まり、好きな本を紹介しあったり、本を通した交流イベントをしたりしています。一方、徳島では読書会というと年配の方々の集いや子供への読み聞かせ会などが主流で、学生など若い世代による読書会はあまり聞きません。そこで、徳島でもこうした新しい読書会を参考に、読書のコミュニケーションの輪を広げていったらどうでしょう。

私が提案したいのは、小グループを併存させて、そのグループ間にゆるやかな結びつきをつくり出すやり方です。読書のレベルや好みは人によってかなり違うので、読書活動では大人数を集めてやるというのはなじみません。数人から十人くらいの小グループでの活動が基本でしょう。ただその際、同時に参加者のニーズに合わせて新グループを作ったり他グループと合同でイベントを行ったりすることを推奨するものです。

この方式は、実は「まちライブラリー」をヒントにしています。これは関西を中心に広がりを見せている本を通してコミュニケーションの場をつくる試みです。カフェや公民館、図書館、交流スペースなどのブックスポットに寄贈本をシェアするための本棚を置いて拠点にし、読書会などを行いながら交流を図っています。そこでは、既存の読書会をゆるやかに結びつける工夫が見られます。ホームページやフェイスブックを立ち上げ、登録蔵書をグループ間で共有できるシステムも構築しています。また年一度ブックフェスタを開催し、各地のブックスポットが一斉にイベントを実施しています。2017年度のBook Festa 2017 in Kansaiでは152カ所のブックスポットで、284のイベントが開催されました。さらにマイクロライブラリーサミットという連絡会を開催し、各地での取り組みについて情報を共有しています。

小規模グループは資力も人力も欠くが、これらが束になると大きな組織にも負けない存在感と組織力・ネットワーク力を持ちうる。徳島での私たちの読書活動もこれを応用して、小規模グループを多く作り、そうしたグループを有機的に関係づけながら共存させていくとよいのではないでしょうか。

実は私はこの「まちライブラリー」に加盟し、徳島で「ビブリオラボとくしま」という会を主宰しています。推薦図書紹介型の読書会であり、地元のカフェを拠点にして初めての人でも入りやすくしているため、さまざまな世代の方が参加しています。ここからいくつも関連グループが自然と立ち上がり、今では映画紹介の会、読書ツアー企画部、雑談会、カフェの集い、朝の読書会といった会がそれぞれ5~15人の規模で活動しています。それぞれのグループには共通のメンバーがいますので、共同でイベントをやることも簡単です。自然とネットワークが生まれ、読書のコミュニケーションが広がっていきます。

従来の読書会に関して、参加者が固定化され高齢化していくという問題をよく耳にします。講師を呼んでやる講演会や特定のテキストを用いる輪読会が主であるため、リーダー任せとなったり参加者が固定化されマンネリ化したりして、参加意識が低下し内向きの会になりがちです。そうした弊害を防ぐ方策として、こうしたやり方は有効でしょう。ひとつの読書会のメンバーが他のグループに同時に参加したり、新たに別のグループを立ちあげたり、他のグループと共同イベントをやったりすることを許容すれば、いくつもの小グループがそれぞれ主体性を持ちつつ、外に向けて展開していくことができます。グループ活動にありがちな排他性や画一化を避けることもできるでしょう。読書活動に関心のある方は、こうした読書のコミュニケーションの広げ方を、考えてみてはいかがでしょうか。


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