【す だ ち】徳島大学附属図書館報 第152号
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○巻頭エッセイ(4)

「ビブリオバトル」について
総合科学部教授 依岡隆児

前回私が担当した6月号で、本を読むための環境作りとしてビブリオバトルは有効であると申しましたが、そのことについて、今回はもう少し具体的にお話ししたいと思います。

ビブリオバトルは、たとえば評論家の山崎正和氏が『読売新聞』(2016年9月5日)で読書啓発活動として効果的であると述べたように、「本を通して人を知り、人を通して本を知る」という読書活動として、注目されています。

やり方は、「バトラー」という本を紹介する人がひとりずつ5分間、お気に入りの本を紹介して、その後2~3分間のディスカッションをします。バトラーが全員この発表とディスカッションをし終えると、参加者全員で読みたくなったという基準で「チャンプ本」を選ぶ、というものです。プレゼンのときに用意した原稿を読み上げることを禁じ、本の紹介後に質疑応答の時間を設けるのは、ライブ感を大切にし、聴衆とコミュニケーションをとることが目的だからです。また、ゲーム感覚で楽しみながら行うという点でも、とかく生まじめなものになりがちな読書活動としては、ユニークです。

徳島大学では、学生サークルとして「阿波ビブリオバトルサポーター」がその普及に励んでいます。昨年、メンバーが減り存亡の危機にも直面したのですが、現在は3名で相変わらず少人数なのですが、他のグループと連携しながらイベントを開催して、成果を挙げています。

6月にはこの阿波ビブリオバトルサポーター企画で、ビブリオバトルが開催されました。バトラーは4名で、参加者は20人を超えました。社会人、教職員も参加していました。すでに徳島大学では2013年からビブリオバトルの活動が行われてきておりますので、一般の方々にも少しずつその魅力が浸透しているようです。ディスカッションでも、あちこちから質問が出て、よくありがちな司会者が代わりに質問、ということもありません。笑いも起こる、温かい雰囲気に包まれた交流の場となりました。

この居心地のよさは、ビブリオバトルの魅力です。ただそれは、内輪のなれ合いによるものではありません。さまざまな人が本を通して集まるなかから生まれるものです。そこには自分がまだ知らなかったことや、出会ったことのなかった人と触れ合う喜びがあります。その意味でも、ビブリオバトルはできるかぎりオープンな場であるべきです。

県下の高校でもビブリオバトルが広がっています。一昨年から県大会も開かれるようになりました。選抜され全国大会に進んだ徳島の高校生が全国3位になったこともあります。全国的には活動開始は遅かったのですが、やってみると徳島県は実力者ぞろいだったようで、将来が楽しみです。

課題もあります。本を人前で5分間紹介するというのは、相当緊張します。気楽にふらっと参加するには、あまりに敷居が高いのです。一度やるとその魅力を知り、リピーターとなる人も多いのですが、最初のハードルを越えるのが難しい。気がつくとバトラーが全員、常連だったということもあります。すると、自ずと紹介される本や紹介の仕方が似てきたり、聴衆受けする本を選ぶようになったりします。ビブリオバトル自体が見世物的なものになることもあります。

もちろん、それが悪いというわけではありませんが、それだけではなかなか一般には浸透していかないでしょう。内輪だけの集いにならず、さまざまな種類の人たちがそれぞれのやり方で読書のアウトプットすることができ、自由に交歓できるようにするにはどうしたらいいでしょうか。それがビブリオバトルも含む読書啓発活動の今後の課題でしょう。

ちなみにこの9月から、「全国大学ビブリオバトル2017~首都決戦」に向けて、徳島でも徳島大学を中心に地区予選会が始まります。ビブリオバトルを始めるにはいい機会です。ぜひご参加ください。


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