なんと,この連載3年ぶりです!不定期にもほどがある・・・。
M課長が“さようなら”してしまったので,私があとを継ぐ(?)べく,再開しました。
さて,今回紹介するのは私の憧れの生活を描いた「イタリア・トスカーナの優雅な食卓」という本です。
この本が出版されたのは1994年。たぶん出版されて間もないころに読んだと思いますが,そこに描かれていたのは,その当時珍しかった「スローフード」「スローライフ」な日々。
この本は,著者の一家がトスカーナの貴族,ボナコッシ伯爵の所有するヴィラで数週間を過ごすエッセイです。貴族,というと贅沢な暮らしを思い浮かべるかも知れませんが,伯爵は,基本的に自給自足の生活をしています。そこで作られるのは,みずみずしい野菜,生ハム,ジャム,ワイン,オリーブオイル・・・。これらの美味しそうなことと言ったら!
また,パンやピザ,パスタも生地から手作りで,友人を招いて作りたてをほおばり,おしゃべりをして過ごすという,なんとも優雅な日々が綴られています。
そしてこの本の魅力はもう一つ。著者が行く先々で出会う,ルネッサンスの絵画そのままのような風景です。著者のパートナーがイラストレーターで,この本の各所に,素敵な風景のイラストがちりばめられています(もちろん,おいしそうな食べ物のイラストも!)
イタリアの美しい風景は,残ったのではなく,伯爵のような人々が手をかけて残してきたのだそうです。それが,イタリアの人々のセンスの良さや芸術性に繋がっている,と著者はいいます。そういった風景に価値を見出し,守っていくことに誇りをもつ人々の豊かさ。消費するだけの贅沢な暮らしとは一線を画した,本当の「豊かさ」がここにある,と私は感じました。ところで,何故こんな昔に読んだ本を今頃紹介するかというと,この本が「徳島読書人が選ぶ最高の31冊」という推薦図書リストに掲載されることになったからです!
このリストは,徳島大学総合科学部の「徳島における読書コミュニケーション文化育成プロジェクト2015」から生まれたものです。このプロジェクトでは読書にまつわる情報や意見を交換する場となる「読書カフェ」を催し,推薦図書のリストを作成することを試みました。「読書カフェ」には徳島県下の学生,社会人など様々な世代,グループに属する方20名ほどの参加があり,バラエティに富んだ本が紹介されました。その中で吟味を重ね選ばれた「31冊」の中の一冊が「イタリア・トスカーナの優雅な食卓」というわけです。
今回,書評を書くにあたり再度読み返していると「そうそう,これこれ,こんな暮らしが憧れなんだよなあ」と思いつつ,「ん?」と思いついたことが。
今,私,かなりこれに近い暮らし,してない?
おばあちゃんが作った野菜を食べ,自分でパンを焼いたり,季節の果物でジャムを作ったり・・・。けっこうなスローフード生活。
そして,私だけじゃなく,徳島って,そういう生活の人,多くない?
日本全体でも,その良さが見直され,そういった生活への志向が高まっているような気がします。
価値観は色々ですが,人間は食べ物でできているのだから,地のもの,新鮮なものを食べるのは自然なことで,そういう生活を「取り戻す」のは良いよね,と思っています。そういう暮らしの楽しさ,豊かさを,この本を読んで体感してみてはいかがでしょうか
ちなみに,「徳島読書人が選ぶ最高の31冊」については,徳島大学附属図書館をはじめ,徳島県立図書館,徳島市立図書館でも展示を行う予定になっています。
リストもあちこちに配布していますので,見かけたら手に取ってみて,1冊でも読んでいただければ幸いです。「イタリア・トスカーナの優雅な食卓」の情報
- 書名:イタリア・トスカーナの優雅な食卓
- 著者名:宮本美智子文 ; 永沢まこと絵
- 出版社:草思社, 1994.5
- 所蔵情報
- 所在:本館3階東閲覧室(人文系) 請求記号:915.6||Mi 資料ID:009509052