今後は、移転先 地域創生センターにおいて行うことになっています。
1月から図書館で本格的に活動をはじめた3D Lab。
3D Labとは、図書館本館に設置した3Dプリンタを、学生FAB(ファブ)※1コンサルタント(以下コンサルタント)のサポートにより、多くの学生に使ってもらおうという取り組みです。この取り組みの正式名称は、ちょっと長いけど「徳島大学パイロット事業支援プログラム(社会貢献支援事業)「3Dプリンタの地域応用と社会イノベーション促進に向けたグローバル人材育成プログラム『ファブラボin徳島』」(実施組織:徳島大学地域創生センター)。前号のすだちで紹介しています。
コンサルタントの養成などの関係で、活動を開始できたのがちょうど後期試験のタイミングとなり、お客さんが来ることは正直期待できませんでしたが、ともかくも活動を知ってもらおう、活動に何が必要かを考えながら実践しようということで進めていきました。
この活動では、まずは、コンサルタントが3Dプリンタのデータ作成、3Dプリンタの扱いに習熟する必要があります。今回コンサルタントに参加した学生は全て学部1年生で学部学科もバラバラ、3Dプリンタ初心者ばかりでした。そこで11月から4回にわたり機械工学科の浮田先生に講習会を開催していただきました。やってみると意外に簡単で、受講中から、コンサルタントの練習として自分の友人に作り方を教えたりする学生も出てきました。その後コンサルタント同士で教え合いをしたり、自分のつくりたい造形をデータで作ってみて出力する、などして日々技術を磨いていきました。
また、なぜこの活動をはじめようと思ったのか、3Dプリンタの何が新しいものづくりにつながるのか※2、そういったこともちゃんと理解し、説明できるよう準備も必要です。実はこれは、最初のお客さんとして来られた院生さんから出た質問ですが、うまく答えることができなかったので改めて勉強し、コンサルタント内で意識を共有していきました。
そして一番必要なのが、活動を円滑に進めるための組織づくり。どういう体制で活動するのか、図書館内のどこでコンサルタントをするのがいいのか、シフトを組むのか、組むならどういった組み方にするのか、どんなプログラムで教えるといいのか・・・これらを全てコンサルタントの学生に考えてもらいました。
活動初日、3D Labの活動がはじまることを事前に知っていた院生さんが早速来てくれました。その時に色んな質問があり、コンサルタントの学生が戸惑ったのは上記のとおりです。でも、みんなが学部1年だということを知ると大変驚かれ、激励してくれました。
その後は教え合いなどをしたり、3Dプリンタの各種マニュアルを整備したり・・・。お客さんこそ来なかったのですが、コンサルタントが3Dプリンタを動かしていると、必ずと言っていいほど学生さんが興味深そうに集まってきます。質問も出たりします。試験期間じゃなかったらなあ・・・と思うこともしばしばでした。
そんな活動も最終日、ついにお客さんがやってきました。しかも二人も!
一人目の方は、とりあえず3Dプリンタの概要が知りたいとのことで、説明だけでモデリング(3Dプリンタ出力用の3D CADデータ作成)は体験しませんでしたが、二人目の方は、モデリングの説明を聞いてあっという間にマスター。初級コースで作ることになっているカップを完成させることができました!
今回利用した学生さんは、二人とも知能情報工学科の学生さんでした。
図書館でそういったサポートがあるのを知り、時間があれば来ようと思っていたそうです。
一人目の方は、図書館で勉強していたその方の友人から「今、3Dプリンタやってるよ」と連絡を受けて急ぎ来館されたとか。3Dプリンタの話をする中で、コンサルタントが知能情報工学科の一年だと知って、今度は学部の授業のことなどの情報交換がはじまりました。
二人目の方は、その前日に図書館で勉強していてコンサルタントの活動を知り、翌日時間が出来たので来ました、と言っておられました。
これらは、色んな学生が行き交う図書館ならではのエピソードだな、と思います。
3Dプリンタについては医学部の方からも質問が来たりしていたので、やはり学部を超えて使える、ということは重要なポイントになりそうです。あとは、いつも使う場所でサポートを受けられる、ふと目にして興味を持つ、ということも。
図書館という場所は、様々な出会い(本だけでなく、情報、インスピレーション、そして人間)と交流の場としての機能を持ちます。多くの大学図書館で「ラーニング・コモンズ」が設置されるようになったのもそのためでしょう。
図書館で3Dプリンタを使えるようにしたらよいのでは、というのもその延長線上で考えていたのですが、実は昨年の「図書館総合展」※3でも3Dプリンタのある図書館についてブースが出展されていました。タイトルは「21世紀の図書館像、モノづくり図書館を再発見しよう。」
そこでは「FabLibrary=モノをつくる図書館は、読書を入力と例えれば、出力する場としての図書館です」と説明されています。
図書館総合展へのリンク
日本ではまだ慶応大学が導入しているだけですが、海外では複数の事例があるようです。今後、多くの図書館で導入が進んでいくのではないでしょうか。
当館での活動は、新しいモノづくりを推進していく体制づくり、学生の養成といったところでひとまず終了します。今後は、来年度開設予定のフューチャーセンターで再開する予定ですが、またいつか、図書館でも再開できないかな、と思ったりします。とにかく「ものづくり」って、楽しいじゃないですか!
楽しく学ぶ人を見て触発され、自分もやってみようかな、と思い本を読み、勉強をし、そして行動する・・・3D Labなど様々な活動を通して、そういう連鎖が図書館で起きることを期待しています。
※1 FAB(ファブ)とは……Fabricationの略。「製造」「組立」という意味ですが、ここでいうFABは、MITメディアラボのN・ガーシェンフェルドらが提唱した次の概念を指します。「個人が自宅のガレージや机の上でものづくりを行うこと。大量生産に対するアンチテーゼであり、生活に必要なものを各個人が自らの創意工夫により製作することを目指す」。3Dプリンタなどデジタル機器の発達とインターネットの普及により可能となった新しいモノづくりの潮流です。
参考:JapanKnowledge Lib
(http://japanknowledge.com/lib/display/?lid=1001150308468)
※2 この活動の事業代表者である吉田敦也先生(徳島大学地域創生センター長)から、解説いただきましたのでご紹介します。
「こうした活動を始めようとした理由は大きくふたつあります。第一は、何より時代の最先端の3Dプリンタを日常的な感覚で徳島大学生に体験してもらうこと。第二は、それをもうひとつの世界的トレンドである「FAB」という枠組みで体験してもらうことです。
そのことからグローバル社会の急速な変化の兆しを知らしめる新しい大学教育をプロトタイプする。それを図書館のコモンラーニングスペースを使って学生との協働で実践する。その新しい学びの「場」づくりです。
そうした新しい学びの「場」で徳大生(また図書館を通じて接する地域の高校生や社会人)に示そうとしたこと(逆の立場から言うと学びとって欲しいこと)は、以下の4つです。
ひとつは産業構造の今日的変化。大量生産でないひとりひとりのニーズ、ひとつひとつの社会課題を解決する多様多品種なモノづくりがすでに可能となっており、3Dプリンタを使えば「ほぼ何でも作れる」時代が到来している。
ふたつめは、その結果、研究の仕方、仕事のあり方、人のあり方、生き方がより人間的な方向へ変化している。それは「自分で作る」(=MAKEあるいはDIYな)ライフスタイルだということ。
3つめは、上記に伴い「学びの変化」が急速に起こっている。大学の先生や専門家などいわゆる権威から教えてもらうスタイルだけでは限界な時代が到来している。意欲や経験に富んだ人、あるいは真に必要と感じる人達が「知識を共有」することで学び合い、工夫し、創り出していく。産業革命以前の「職人」(アルチ ザン)的なスタイルが今求められている。
最後に、こうした新しい大学教育に必要なのが、教室ではない「場」です。ここでは特にモノづくりの「場」。しかしそれは油の臭いのする工場というものでな く、知性、アイデア、つながり(つまり知的資本)を協働させる「場」であり、発想を豊かにするスタイリッシュな「場」。それは、先人らの知がアーカイブされそれに囲まれ学ぼうと人が集まり、学部や学年など専門領域や世代を越えて交流する、まさに「図書館」なのです。」
※3 図書館総合展とは・・・・・図書館総合展は、公共・大学・機関・企業・大学・学校等すべての館種の図書館についての、最新技術・サービス・トレンド・学術情報を紹介する、図書館界最大の展示会です。(第16回図書館総合展公式サイト http://2014.libraryfair.jp/about より)