1.はじめに
今年5月に蔵本分館より申請していました「エビデンスに基づいた生命科学を推進できるグローバルな人材育成プログラム」が平成26年度学長裁量経費(教育支援:パイロット事業費」)に採択されたことを受け、「R言語によるやさしいバイオ統計実習」と題して、主に学部学生を対象にR言語講習会を下記のとおり行いました。
講習会には、医学部、歯学部、薬学部、工学部及び疾患酵素学研究センターから参加者がありました。
期間:
2014年8月21日(木)-22日(金)2日間
場所:
附属図書館蔵本分館
2Fミーティングルーム
申込者:23名
参加者:
1日目20名 2日目19名
2.目的・動機
近年のIT技術の進展により、医生物、医学、歯学、薬学などの分野でビッグデータが生成されており、そのデータの活用や分析することが重要な課題となっています。特に、統計学に基づいたビッグデータ解析やデータマイニングを駆使して、実践的な課題発見・問題解決能力を持つ人材の育成が急務とされています。そのような状況のもと、「R言語によるやさしいバイオ統計学習」講習会を開催することになりました。
3.講習会について
初日は、最初にR言語の基本的な使い方を学び、度数分布図、標準偏差など基本的な記述統計の説明をされました。並行して、R言語を駆使して、説明のあった統計に関する課題を解くことによって、より理解を深めることができたようです。
2日目は主に、正規分布や確率に基く2群検定や相関、回帰、カイ二乗検定などの推測統計をR言語を使って、統計処理をする統計手法を学びました。課題も実践的に利用できる統計手法を利用することになり、これらの課題を解くためには、R言語でマトリックスを駆使する必要があるなど、次第に難しい内容となって来ましたので、受講した学生さんはかなり真剣に説明を聞き、課題に取り組んでいたようです。講習後、学生さんに話を聞いてみたところ、「今すぐ、R言語が必要ではないが、これからの勉強や研究に役立つと思います。」ということを幾人かの学生さんから聞きました。
4.アンケート結果
「今回のR言語講習会を受講してみての感想を教えて下さい。」という質問にアンケート回答者20人のうち、「今後の研究や勉学に役に立ち有意義である。」という回答を16名の方からいただきました。他には、「今後の研究や勉学に役に立つかどうかわからない。」が3名、無回答1名です。よって、今回のR言語講習会の評価は高いと判断することが出来そうです。
「受講内容の難易度を教えて下さい。」という質問には回答10人が「ちょうど良いレベルだった。という回答でした。しかし、「易しい」「大学院生や研究者レベルのプログラムを用意すべきだ。」という回答が6件ありました。受講者のレベルに応じた講習会を開催する必要があると考えられます。
「今後、講習会などを行ってほしいテーマはありますか。」という質問には、R言語統計関係8、LINUX関係9、Perl言語関係6、Python言語5となっています。LINUX関係やプログラム言語の要望が高いことが伺えます。
5.おわりに
医生物学をはじめとして、各分野でバイオインフォマティックという言葉をよく聞かれるようになりました。医生物学分野とコンピュータやプログラミングなどの情報分野の関係は深まる一方であり、統計学に基づいたR言語を学ぶ意義は大きいと考えられます。大学図書館として、文献検索、ライティング支援や学生との協働学修などを行って成果を上げている大学図書館も多いと思いますが、今回のR講習会を開催するという、新しい視点から研究・学修支援を行うという試みは、医系大学図書館としては、小さな意義があったのではないかと考えています。これからも引き続き、教職員、学生からのご支援をいただきたいと思います。この教育支援パイロット事業に関連して、蔵本分館では、秋以降に「エビデンスに基づいた医療を実践するためのEBM」ワークショップを開催予定です。ぜひ、ご興味のある方はご参加いただけますようお願いします。最後になりましたが、今回の教育支援:パロット事業費申請に関して、各大学院、学部の関係教員の方々からご支援をいただき、この事業を行うことが出来ましたことを深く感謝します。