【す だ ち】徳島大学附属図書館報 第113号
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○M課長の図書館俳句散歩道 (夏 水無月の巻)

六月になりました。旧暦で水無月です。

よく雨が降るのに、なぜ「水無月」と言われているのでしょうか?


実は、「みなづき」の「な」は「無」ではなく現代日本語の「の」と同じ属格(所有格)を表す連帯助詞で、「水な月」とはつまり「水の月」、「神な月」とは「神の月」のことだそうです。「な」に「無」の字を使うのは単なる当て字であるという説があります。


他には、旧暦六月梅雨が明けて水が涸れてなくなる月からという文字どおりの説や、逆に田植えが終わって田んぼに水が必要であることから「水張月(みずはりづき)」「水月(みなづき)」という説も有力です。

「水無月」についての疑問は、平安時代の和歌の研究書「奥義抄」に「此月俄かにあつくしてことに水泉かれつきたる故にみづなし月と云ふをあやまれり」と書かれているところから、かなり古くから「水無し月」と理解されていたようです。


神無月に日本中の神が出雲大社に行ってしまうので神がいなくなり、逆に出雲では神が集まるので「神有月」と呼ぶというのは、「な」が使われなくなった時代に作られた俗信であるとの説もありますので、詳しい調査については、図書館をご利用ください。


さて、六月に入って新入生の皆さんは学生生活にも慣れてきたと思います。また、他の学年の方も新しい年度がはじまり、ようやく落ち着いてきたことでしょう!


今回は、「発見すること」「気づくこと」の大切さや面白さを紹介したいと思います。毎日同じようなことの繰り返しや季節の変化の中に、いろいろ気づくことがあると思います。それが小さな発見です。先ほど紹介しました「水無月」についての疑問もそうです。


小さい子供の頃には「不思議に思うこと」や「小さな発見」がたくさんあったように思います。植物の名前や生育、昆虫などの動物の生態、惑星や星などの天文観察など「ワクワク」しながら、一生懸命に夏休みの理科研究に取り組んだことを想い出してください。



“かたつむり 甲斐も信濃も 雨の中”        飯田龍太


山梨と長野の県境は屏風のように高い山が連なっています。その屏風のてっぺんに立って甲斐を見て、そして信濃を見た緑の山々の遠景と小さなかたつむりとの対比がかえって雄大な光景を引き出しています。

他国との国境に立つ彼自身が「かたつむり」であり、その二つの国を「雨の中」いわゆる心の中で一つとしてとらえることができた自分自身の感慨をこの俳句の中に発見してみてください。その時もうこの俳句は、あなたがとらえたあなたの俳句になってくると思います。


“六月や 峰に雲置く 嵐山”      芭蕉

嵯峨野の落柿舎から見える嵐山に、純白の入道雲が沸き立っている。山の滴るばかりの新緑が白い雲を背景にキラキラと光っている美しい古都の夏が見えてきます。


“六月の きれいな風の 吹くことよ“  子規

療養中の子規の句です。病苦への恨み言や悲嘆などは微塵も感じられません。彼の澄み切ったすがすがしい心境に心を寄せてみてください。


先人の名句を鑑賞するということは、自分が詠むこととは別の面白さがあります。どうして、この句は自分の心をとらえるのだろう。なぜ、この句に惹かれるのだろう。そうした小さな「発見」が、自分のものとして俳句を詠んでいるということに気づけばとても楽しいことだと思います。


感性を磨くとは、五感(視覚 聴覚 嗅覚 味覚 触覚)をフルに働かせることです。五感を働かせば、第六感も磨かれていきます。


わずか十七文字の世界を、どうとらえるか、そして何を感じるかはまさに自由自在です。


図書館に来て、静かに読書をしたり、ラーニング・コモンズのカフェで友人とおしゃべりしたり、くつろいだり、ネットで調べたり、そんな自由空間や時間空間、そして知的空間の中であなたの感性を是非磨いてください。


例えば「雨」という漢字、なぜこの字になったのか調べてみたいと思いませんか?

漢字の原点は、象形文字ですから、4つの点々をよく見ればなんとなくわかりますね。


雨のつく漢字といえば、「喜雨」「驟雨」「白雨」「小糠雨」「時雨」「氷雨」「遣らずの雨」「村雨」「虎が雨」。いろいろありますね。


大漢和辞典に載ってある「雨」の漢字は300以上あるそうです。その中で、最多画数はなんと52画の漢字ですが、知的好奇心が湧いてきたあなたはすぐ知りたいですね。


その中で「青梅雨」という季語を紹介します。

青梅雨とは、梅雨の異称の季語です。

梅雨の頃は、新緑の季節でもあります。太陽の光をたっぷりと浴びた木々はその葉の色を濃くしていきますが、青梅雨はそうした木々の葉に降る雨を指す言葉です。

天の恵みとして木々を潤す様を連想することができます。

「青梅雨」は鬱陶しい雨の季節の中にあって、ただそれだけではない違った一面を感じさせてくれる「気づき」の言葉です。


“青梅雨や 図書館で待つと メール来る”


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