【す だ ち】徳島大学附属図書館報 第112号
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○M課長の図書館俳句散歩道 (春 皐月)

ごあいさつ


ご縁がありまして、3年ぶりに徳島大学にかえってきました、

6年前に赴任した時に

”春うらら 微笑みかえす 眉山かな”

と 眉山と阿波の里と徳島大学にあたたかく迎えていただきました。


また 3年後には

”菜の花や さよなら告げて 吉野川 ”

と 別れを惜しみながら 新たな赴任先へと 異動いたしました。


人は 出会いと別れによって さまざまな 思いを抱き そして

一期一会の中で 「ありがとう」「さようなら」と 告げる 旅人なのだと 感じています。


3年ぶりに、ふたたび徳島にかえってきて詠んだ俳句です。

”再会の 眉山の笑みに 風光る ”


さて、こうした中で 今回 皆様に ご紹介する 俳句は

皐月と いえば これしかないという 名句です。


”五月雨を あつめて早し 最上川”


松尾芭蕉の 「奥の細道」で詠まれたこの句は、みごとに降り続く五月雨に

水かさを増した 最上川の激流を描写しています。


実は この句の 原形は なんと“五月雨をあつめてすずし最上川”であったことを

ご存知でしょうか?


俳句は存門の詩と言われています。

存門とは、安否を問い、慰問するという意味で、挨拶のことを意味します。


実は、松尾芭蕉の時代から、俳句は挨拶を第一にして作られるものだったのです。

この頃の俳句は、俳諧連歌の発句(最初の句)にあたる部分に該当します。


そして、発句は、挨拶句でもあります。


芭蕉が『奥の細道』の旅の途中、最上川のほとりにある「一栄・高野平右衛門」宅の句会に招かれました。


芭蕉は、挨拶の発句として ”さみだれを あつめてすずし もがみ川”と作り、

一栄は、脇句(第二句)として ”岸にほたるを繋ぐ舟杭 ”を返しました。


この句会が開かれたのは、六月上旬の暑い時期で、芭蕉は旅の疲れを癒してくれた最上川の涼しさとこの景色を一望できる一栄宅を賛美し、その「おもてなし」に感謝しました。


芭蕉が、この句の「涼し」から「早し」に変えたことは、普遍的な悠久の自然に向き合った彼の俳句に対する文芸精神への豊穣をみる思いがします。


最上川の圧倒的な自然の迫力が、この「早し」の3文字に集約されています。


さて 新入生の皆さん 大学生活は、はじまったばかりですが いかがでしょうか?

大学に入れば、自宅通学から下宿生活へ また科目履修の選択、その他学生生活において今までの受け身から積極的に自分から対応していくことが多くなっていると思います。


はじめての出会いで、大切なのは特に「挨拶」です。


本来、「挨拶」は仏教語であり、「挨」は開く、「拶」は触れ合うの意味があり、お互いの心を開きあい触れ合うところに意味があります。


あたりまえのことかもしれませんが、「こんにちは」というたった一言で、人を笑顔にさせ、温かい気持ちになります。


図書館は、心から皆さんと“ふれあい”たいと思っていますので、お気軽に お越しください。


図書館から毎朝 皆さんへ 挨拶を告げる 俳句です。


”風薫る 開館告げる ペール・ギュント”


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