【す だ ち】徳島大学附属図書館報 第111号
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○附属図書館副館長就任にあたって

依岡隆児

このたび、附属図書館副館長を拝命いたしました依岡隆児(大学院ソシオ・アーツ・アンド・サイエンス研究部・教授、併任)と申します。就任にあたって、ひと言ご挨拶申し上げます。

副館長職は今年度から新設されたポストで、二つ置かれましたが、私は常三島地区・本館の方を担当いたします。全学共通教育センターや総合科学部、工学部との連携を取りながら、主として学習支援を推進していくことが期待されています。

大学において、読書を取りまく状況には厳しいものがあります。2013年10~11月実施の大学生協連のアンケート(全国30国公私立、8930人)によると、大学生の1日の読書時間は平均が26.9分、4割が0時間で、2004年以来、最低でした。大学における図書館は、こうした学生の読書離れに対して手をこまねいているわけにはまいりません。一方で、IT技術の発展によって検索機能が普及・簡便化してきており、ただ蔵書を有し情報検索サービスを提供するだけでは、これからの図書館は存在理由を問われかねません。そのため、こと大学の図書館においては、リアルな空間体験と双方向的コミュニケーションの場を提供しながら、学習支援に積極的に関与することが、重要になってきていると考えられます。

では、どうすればよいのでしょうか。私の考えていることを、以下にまとめてみます。


(1)本との「出会い」を演出

図書館は目当ての本を探す場だと思われがちですが、そこで本棚の間をさまよううちに思いがけない本と出会うということはないでしょうか。探していたわけではないが、見つけてみると自分が潜在的に求めていたものだと気づくという体験です。検索機能の効率化はさらに磨きあげるべきですが、それだけではなく自分が漠然と求めていた本に「出会う」というのは、図書館という空間があればこそ可能なことです。そのための「出会い」を演出する仕掛けを工夫したいものです。

こうした「出会い」が「興味の連鎖」を生み、ときに専門の垣根を超えて、知のブレーンストーミングを起こすとすれば、図書館が知的な創造の場として輝きを増すことでしょう。具体的には、学習支援アドバイザー制度や全学共通教育センターが行っている読書レポートへのさらなる支援とともに、テーマ本棚の設置や読書会・ビブリオバトルの開催、学生による本のレコマンドの編集・公表などが考えられます。さらに、読書の水先案内人ともいうべき「コンシェルジュ」を養成し、学生による図書館ツアーなども実現できたらと思います。


(2)居心地よい空間を創出

様々なニーズに応えられるようゾーニングを行い、閲覧スペースや対話スペースなどでそれぞれさらなる整備を進めて、図書館を多種多様な人々が集まる場にしたいものです。学習支援やピアラーニング、インスピレーションと知的創造の場とするにも、人が集まってこそ、です。その意味で、図書館においても、カフェのような居心地のよさをより一層、追求していくべきだと思います。


(3)図書館サポーターを結集

図書館が学生による自主的な学び合いの場となるには、学生自身が主体的に行動できることが、なにより大切です。そのためには、学生サポーターを活用するのがよいと思います。幸い、すでにライブラリー・ワークショップや阿波ビブリオバトルサポーター、Study Support Space(SSS)、繋ぎcreateなどのサークルが図書館においてサポート活動を展開しています。こうしたサークルの相互の連絡と情報交換を図るための体制を構築していく必要があると考えています。


以上、私の考えをまとめてみました。図書館を本や人との「出会い」が生まれる、いわば「本の森」にするというのが、私の夢のひとつです。そのためにも、図書館職員ならびに関係者と一緒に、知恵をしぼっていきたいと思います。皆さまのご支援とご協力を、切にお願い申し上げます。


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