【す だ ち】徳島大学附属図書館報 第110号
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☆第19回FDフォーラム(大学コンソーシアム京都)発表報告

1月に引き続き、2月も図書館の新しい学習支援「Study Support Space(SSS)」について発表する機会をいただきました。

今回は、大学コンソーシアム京都が主催する第19回FDフォーラム(2/22,23開催)での発表です。


http://www.consortium.or.jp/contents_detail.php?co=cat&frmId=2764&frmCd=8-1-2-0-0

FDフォーラムは、FD(ファカルティ・ディベロップメント)に関わる教職員、学生などが全国から集まる大きなフォーラムで、今回は「大学図書館からの学習支援」をテーマとする分科会が設定されました。私はこの分科会での発表を依頼されたのですが、このようなテーマ設定はおそらくこれまでのFDにはないもので、これも、図書館と学習支援の関係がクローズアップされてきたことの表れでしょう。


フォーラム全体では数百人の参加がありますが、私が発表した第4分科会の定員は50名。実際の参加者は、図書館職員30名、教員16名、その他2名の計48名だったそうです。


今回の内容は、1月のFD・SDセミナーとほぼ同じですが、学外者向けなので徳島大学の実状説明を加えて発表しました。


発表資料へのリンク

発表内容を要約すると、次のようになります。

  1. 徳島大学附属図書館にラーニング・コモンズらしきものが出来たけど人的支援ができなかった。
  2. そこで、FD関連の教員、学生と連携して、SSSという学習相談を開始した。
  3. SSSの実績は、131日(12月末現在。今年度最終集計では153日)開室、利用者数352名(最終値)。
  4. 1年生の利用が6割、工学部の利用が約5割、数学、物理の相談がそれぞれ3割強。
  5. 3回のアンケート実施。認知度は約5〜6割。利用率は1割。利用者の満足度は高く、リピーター率は6割。実施してほしい支援の内容を見ると、大学の学び方に戸惑っている様子が見られる。
  6. 利用しない理由は「知らない」「時間が合わない」「部屋に入りにくい」などでこれは改善の余地がある。

これからラーニング・コモンズを設置しようとしている大学や、教員との連携について課題がある大学からの参加者がが熱心に聞いてくれたようで、30分の発表のあとは、次々と質問が飛んできます。

「アドバイザーとのトラブルはないのですか?例えば院生が教えたレポートの書き方について専門の先生からクレームが来る、などは?」

「今回紹介されたような学習支援は教務の仕事では?図書館には教学系の情報も来ないと思うので、図書館で学習支援を行うことに違和感があるのですが・・・」などなど。


1つ目の質問については「アドバイザーとのトラブルはこれまで特になかったのですが、今後はそういったトラブルがないように研修などを行う予定です」と回答しました。

2つ目の質問は、出るべくして出た質問だなあと感じました。これまでの図書館を考えれば、特に事務の方であれば、この感覚はある意味当然なのかも知れません。ですが、どこで学習支援を行うかについては、学生の立場に立って考える必要があり、シラバスのことなら学務に聞くし、図書館なら文献のことについて聞くでしょう。何より、勉強しているその場所で学習相談を受けられれば便利です。学習支援はどこか一部署がすればよい、というわけでなく、学生がどこで支援を受けたら良いのかを考え、それぞれの担当部署の専門性を活かしたサービスを行って、それぞれが連携する必要があると思っています。

また、その連携の仕方、サービスの仕方は大学の事情によって色々です。何が何でも図書館でなければならないとも言えないと思います。というようなお話をして、質問者の方とお互いの大学事情などの情報交換を行いました。


発表後、何人かの大学教員、図書館職員の方と話す機会がありましたが、みなさん驚いていたのが「どうしてこんなにたくさんの先生が協力してくれるのか」ということでした。うちは、以前から比較的協力的な先生が多いこと、FDを熱心にされている先生に声をかけると連携しやすいこと、やはり学生からの依頼ということが成功の要因だろう、というような話をしましたが、あらためて考えると、ありがたいことです。

また、SSSの活動について活動実績がデータとして挙がっていること、またアンケート結果なども分析されていることも、参加者の方から「効果測定の必要性を感じた」と評価していただきました。これも、学生スタッフが行ってくれた日々の相談結果入力作業や、スタッフ教員のアンケート分析作業の成果です。


この分科会は、これからの大学教育のためには図書館と教員、職員との連携が必要であるということで締めくくられました。当館も、その端緒に立ったばかりです。こういった連携は、誰かが言い出さないと始まりません。誰かが言い出すのを待つ、仕組みができるのを待つ、というのもアリかもしれませんが、連携が必要だ、と思ったらまずは自分から情報収集をする、話を聞きに行く、話をしに行くというように、積極的に外へ出ていくこと。それが理想に近い形で連携を進める第一歩だと思いました。


今回のFDフォーラムは、龍谷大学深草キャンパスで開催されました。最寄駅を下りると目の前に伏見稲荷大社があります。少しだけ寄り道して、お参りをしてきました。

伏見稲荷大社

お参りのご利益か、発表もスムーズに終わり、多くの反響をいただき、私も多くを学んで帰ることができました。4月からのSSSに活かしていきたいと思います。

発表の機会を与えて下さった方、発表を聞いてくださった方、ありがとうございました。


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