【す だ ち】徳島大学附属図書館報 第96号
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☆電子ブックトレンド講演会(その2)を開催しました

去る12月20日(木)、徳島大学附属図書館本館では、総合科学部主催、附属図書館および地域創生センターの共催で電子ブックトレンド講演会(その2)「ディスプレイの中のニッポン:ライブラリーを通してつながる世界と日本」を開催しました。これは昨年度開催した「電子ブックトレンド講演会」の第2弾にあたります。

今回の講演会は、図書館職員が参画している全学共通教育講義「iPadで育てるグローバル学習戦略」の一環として企画されました。この講義では、iPadを活用しながら様々な「知」にアクセスすること、知のプラットフォームとしての大学・図書館の活用法を学ぶこと、Facebookなどソーシャルメディアを活用して国の隔たりを意識できずに議論したり交流したりできる力を養うこと、などを目的としています。中でも「グローバルな視点を養う」ことを中心に授業を進めてきました。

その講義の図書館担当分として企画したのが今回の講演会です。コンセプトは、海外の大学事情・デジタル化事情などを知る機会を得ること、そこから日本のデジタル事情が海外に与える影響、日本における教育情報化の問題などを考え学生・教員・職員が新しい視点を得ること、としました。講師として海外の大学図書館等を調査した吉植庄栄氏、江上敏哲氏をお招きし、インド、ヨーロッパ、アメリカなどの教育事情、デジタル化事情などの紹介をしていただきました。


講演会のポスターはこちら

講演会の様子はこちら

講演の様子 講演の様子 講演の様子

宮城教育大学附属図書館の吉植さんからはインドの大学事情が紹介されました。インドの大学について報告した事例はこれまで聞いたことがなく大変興味深いものでした。IT大国として台頭しているインドですが、大学は決して恵まれた環境ではないようです。ただ大変元気で、論理的思考に長け英語による発信力もあるインドの潜在能力は高い、ということでした。高度経済成長期の日本の風景に近いものだったという言葉が印象に残っています。

国際日本文化研究センターの江上さんからは、著書「本棚の中のニッポン」を中心に据え、今回の講演会のコンセプトに合わせ「大学の研究・学習環境を“世界と日本”から考える」ということについて、海外の事例を報告していただきました。海外のラーニング・コモンズや海外の大学図書館職員の位置づけなどについて聞いていると、じゃあ日本はどうなっているの?という疑問が自然に浮かび上がってきます。また、日本から発信されている情報が海外でどのように扱われているか、日本のデジタル化の遅れが海外での日本研究にどんな影響を与えているか、というようなことはこれまで考えたことのない視点だったと思います。最後にまとめとして話された「自分からライブラリアンに近づいて自分の知りたいことを尋ねる海外の学生のように、自分の力で動いて情報を仕入れていくことが必要」「『ラーニング・コモンズ』、『電子書籍』、とそれぞれのトピックについてのみ考えるのではなく、それをどうして、どのような場面で、どのようにして使いたいのか、その問題をとりまく世界全体を考えることが必要」という指摘は、学生、教員、職員それぞれに、感じるものがあったのではないでしょうか。

講師のお二人はいずれも図書館職員ですが、プレゼン能力の高さには驚くものがありました。吉植さんにいたっては、インドの衣装に着替えて講演をするというサービスぶり!朝から「iPadで育てるグローバル学習戦略」講義への参加、防災訓練第2部講演会での講演と大活躍され、いずれも楽しく興味深い内容でした。江上さんも、話しようによっては大変難しい内容を具体的な例をあげてわかりやすく紹介され、聞く人の関心を集めるようなパワーポイントの作り方が秀逸だったと思います。


今回の講演会の参加者は、学生:17名、学内教職員:19名、学外:6名の計42名でした。広報の遅れや他の学内行事との関係で参加者は少なめでしたが、参加していただいた方には満足いただける内容だったようです。


アンケートの結果はこちら


今回特に感じたのは、学生さんからの反応の良さでした。アンケートに回答した学生16名のうち15名が自由記述欄にコメントしてくれています。これまで様々な企画でアンケートをとってきましたが、学生さんからこれほど自由記述にコメントが寄せられたことはないように思います。詳しくはアンケートの結果をご覧いただきたいと思いますが、期待以上に面白かった、という意見をいただき、企画した側として、大変うれしく感じています。


最後に、講師の方々について、ちょっと裏話。実は、今回お招きしたお二人と、講師をコーディネートした私とはいずれも初対面でした。では、なぜこの二人をお招きしたかというと、きっかけは他でもない、ソーシャルメディアでした。吉植さんとは仕事上のやりとりを発端にFacebookで「お友達」になりました。そこで吉植さんがインドに研修に行かれることを知り、講演をお願いすることにしました。江上さんは彼のブログを読んだことがあっただけだったのですが、共通の友人がFacebookで江上さんの著書を紹介したことから、Facebookを通じて恐る恐る講演をお願いしたところ、ご快諾いただきました。「ソーシャルメディアを使ってネットワークを拡大し、学習/研究活動を展開する」というこの授業の目的の、生きた事例となったわけです。


お忙しい中徳島までお運びいただいた講師の方々、講演会にご参加いただいた方々、ありがとうございました。この講演会がみなさんの中に何か新しいことが生まれるきっかけとなれば幸いです。


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