去る2012年11月30日(金)、徳島大学開放実践センターで開催された「平成24年度全学FD推進プログラム 第3回FD・SDセミナー」で、話題提供者として発表させていただく機会をいただきました。
テーマは「図書館を利用した学習支援」。
三重大学の長澤多代先生と私から図書館を利用した学習支援について話題を提供し、図書館を使ってどのような教育改善ができるのか、参加者とともに考えていくという企画です。
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長澤先生からは、大学の学びが変化する中で、図書館の機能強化が求められている状況について説明があり、その中で図書館と教員がどのように連携するか、どのように連携すれば効果的か、ということをお話しいただきました。
私の方からは、徳島大学附属図書館本館のラーニング・コモンズを事例として、図書館が行っている学習支援の状況、教員との連携、人的支援の充実を図るための試みなどを紹介しました。
以上の話のあと、参加者がより理解を深められるよう、グループでワークを行いました。
「Think-Pair-Share」と呼ばれる技法で、
- 1. 自分で考える
- 2. ペアで考えを共有する
- 3. 全体で考えを共有する
というように進行します。今回は、人数と時間の関係で、4名~5名のグループで共有したあと、全体で共有することにしました。
考える内容は、
- (1) 担当する授業の中で、今後、図書館をどのように活用できそうか
- (2) 図書館に期待することは何か
の2点で、学生は(1)については、「どんな授業を受けたいか」について考えてもらいました。
今回のセミナーの参加者は、学生、教員、職員、他大学の参加者、遠隔会議システムでの参加者(4会場)と多岐にわたり、遠隔システム受講生も含めると50名を超えて、これまでのFD・SDセミナーの中で、最高の参加人数だったということです。グループワークの際には、各グループに教員、職員、学生という属性の異なるメンバーが必ず入るよう、コントロールし、多様な意見が共有できるよう工夫しました。
その結果、
- 「オフィスアワーを研究室ではなく図書館でやったらどうか」
- 「新聞記事の読み比べをしては」
- 「多くの辞書・事典類を用いて事項を調べさせ、考察させる」
- 「グループ学習の場として利用する(こういう可能性については今まで認識していなかった)」
- 「授業時間外の学習につなげる」
- 「授業関連のトピックコーナー、パスファインダーの作成」
- 「白熱教室のような、図書館にある本や論文などを読んだ上で行う授業」
- 「先生の勧める本を教えて欲しい。先生の目線から本の良さについて授業中に語ってほしい」
- 「新しく何かを学ぶ知識をしっかり蓄えられる授業。蓄え方も知らない学生が多いのでは」
など、様々な意見が出されました。
図書館に期待することとしては
- 「開館時間の延長」
- 「快適な自習環境」
- 「専門性の高いスタッフ」
- 「テーマを決めて学んだり研究することの楽しさを知る」
- 「まずは本に親しみを持たせる」
- 「Yes/No心理テスト?→Yes,Noの質問に答えると読みたい本を紹介できるような資料」
- 「学生が教科書を買わなくてもよいシステム」
などがあげられました。
立場の違う者同士が図書館の学習支援について考える、という機会はめったにないことです。私事ですが、ここ数年、ラーニング・コモンズに携わる中で、学生・教員・職員が一緒になって、「図書館が大学で果たす役割とは何か」について話し合う機会を設けたい、シンポジウムを行いたいという「夢」を持っていました。大学図書館界では、図書館の学習支援機能は重要なテーマとなっています。ですが、図書館が現在提供している学習支援が果たしてどの程度利用者に伝わり機能しているのか、提供したいと考えている学習支援は大学全体の教育の流れに沿っているのか、ということを利用者とともに考える機会はあまりなかったように思います。図書館が独善的にならず、その機能を発揮するためには、利用者と一緒になって大学教育における図書館の役割を考え、学習支援機能を構築することが必要なのではないかと思っていたのです。今回のこのセミナーは、少し形は違いますが、その「夢」の実現にごく近いものとなりました。
なお、このセミナーのあと、全学共通教育センターの古屋玲先生より、図書館で学習サポートを行ってみたい、との申し出があり、試行的に12月14日から毎週1回、サポートに入っていただくことになりました。その他にも色んな「芽」が出たように感じています。多くの期待に応えられるよう、期待していただける図書館になるよう努めていきたいと思います。
最後にこのような機会を与えていただいた、大学開放実践センターの宮田正徳先生、吉田博先生、ラーニング・コモンズについて数々のご示唆をいただいた三重大学の長澤多代先生にこの場を借りてお礼申し上げます。