【す だ ち】徳島大学附属図書館報 第86号
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附属図書館長の退任を前にして-これからの図書館について-

徳島大学附属図書館長 野地澄晴

この度、平成24年3月31日をもって館長を退任することになりました。1年の期間でしたが、図書館の運営にあたり皆様のご協力をいただきましたこと、深く感謝いたします。4月1日からは新蔵町の本部にて図書館の発展を支える所存です。

時代の変化は速く、特にコンピュータの進歩は想像を超えて発展しています。その発展が直ぐに、われわれの日常の生活に影響をしてくるのがたまらなく楽しく、また一方でたまらなくやりきれません。私も数年前からスマートフォンとやらを使用していますが、もちろんほんの一部の機能しか使用していないのですが、便利です。メールやYouTubeなどはもちろん、見知らぬ土地、特に海外でのGPSの利用が、旅を楽にしてくれます。私は現在63歳なのですが、大学生の20歳(1968)の時には、世界初のプログラムつきのカシオ電子式卓上計算機「AL-1000シリーズ」が登場したくらいの時代でした。それから40数年、誰が考えたのかe-mailなどを駆使する時代が来ることは想像できませんでした。40年前には、英語の論文は手動のタイプライターを使用して書いており、コピーはまさにカーボンコピー(Cc)をしていました。今や、ワープロソフトがスペルのチェックや文法のチェックまでしてくれるし、コピー/ペーストを行うのに糊は必要ありません。従って、以前より論文が簡単に書けるようになっているはずなのですが、なぜかそれについてはあまり変わりなく、なかなか良い論文を書けてはいないのが実情です。アメリカの大学の大学院生が始めたというグーグルが、世界を動かしています。無料で検索するサイトがあり、さらに地図などが無料で見られるのですが、このグーグルは検索連動型広告を収益源としながら無料の新サービスを相次いで打ち出して、高成長を続けています。私もGメールを使用していますが、多くのメールを保存して、様々に利用しています。さらに、DropBoxとかEvernoteとか、このようなシステムをクラウドと言うらしいのですが、これらを有効に使用することにより、あらゆる知的生産活動が便利になってきています。総ての文書や本をデジタル化し、クラウドを利用して何時でもどこでも論文を読んだり、書いたりできる時代になってきました。日本はなぜか遅れているようですが、電子ブックが普及し、クラウドを利用して誰でも本を読める時代が来るのでしょうか。そのような時代に、図書館はどう対応してゆかなければならないのでしょうか。最近の世の中の進歩は、年寄りの想像を超えており、クラウドを、このシステムはある日突然なくならないのであろうか?などと考えながら、恐る恐る何とか使用しています。今の世界を40年前どころか、10年前でさえ予想できませんでした。そのことを考えると、10年後の図書館はまったく別のものになっていなければならないような気がしています。それはどんな図書館なのでしょうか? 大きな大学には、大きな図書館と大きなコンピュータがあり、それが学問の象徴でしたが、クラウドはその必要性を解消し、誰でも雲の中の図書館を利用できるようになるのかもしれません。


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