今回は、ライブラリー・ワークショップ企画「総合科学営業 『僕の読み解く数冊の本』」で展示させてもらっている本を紹介します。
本のテーマは「極めるということ」。次の6冊を展示しています。
- 『ファンタジア』ブルーノ・ムナーリ (視座 『自然に触れる』)
- 『マン・オン・ワイヤー』フィリップ・プティ (視座 『人と触れる』)
- 『日本語ほど面白いものはない』柳瀬尚紀 (視座『人と触れる』)
- 『先生とわたし』四方田犬彦 (視座 『人と触れる』)
- 『静かなる旅人』ファビエンヌ・ヴェルディエ (視座 『人と触れる』)
- 『フェルマーの最終定理』サイモン・シン (視座 『ものに対応する』)
一見ばらばらの本ですが、読んでいるうちに私の中でつながりを感じて、このテーマに集約されました。
「極める」にも色々あります。芸術を極める、研究を極める、自分の夢を実現する……。
そしてまた、これらを語る本の切り口も様々です。
道を極めた人のものの見方を示すもの、極めた人の人生について語るもの、極められた研究の成果を理解するもの……。
これらの本を読んで共通に感じたのは、何かを身につける、自分が納得いくまで極める、という領域へは、当然のことながら自分で感じ自分で動くことでしか至ることができないのだ、ということ。
それには、本物に触れ、現実に触れる、ということが必要になってきます。
誰かのフィルターを通じて現実を見ていては、そこには至れません。
ネットで何でも調べられる今だからこそ、地上に足をつけて歩く感覚をしっかりつかみたい。
きっとそんなことを考えていたのだと思います。
実は、この本を集めたときに、もう一つ、テーマの候補がありました。
それは、「良い師を得る」。これらの本のいくつかには、「師」が登場します。
「良い師を得る」ということは、数百冊の本を読むのに匹敵するな、と感じたのです。
それは、道を極めるためのヒントを得られる、とか、近道を教えられる、ということではありません。
師が持っている知や技の世界の前に立たされて、自分の力でその意味を捉え、自分の世界と照らし合わせて自分のものにしていく、という作業を繰り返す中で、本を読んで得る知識よりもはるかに多くの、有機的に繋がりのある「自分にとって必要なもの」を得る、ということ。
大学図書館ができることは、多くの方に学びのきっかけを掴んでもらうことだと思っています。
そして、学生のみなさんには、大学で良い師に出会うきっかけがあるはずです。
今回展示している本はほんの10数冊ですが、これが、誰かにとって「師」のような存在、あるいは良い師に出会うきっかけになれば、と願っています。