【す だ ち】徳島大学附属図書館報 第73号
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○蔵本分館に瓦があります

徳島大学附属図書館蔵本分館積層書庫の階段下から段ボール箱に入った巴瓦と平瓦,鬼瓦が見つかりました。瓦には「徳島連隊木造二階建兵舎後,徳島大学医学部図書館 1968年7月5日解体 黒田嘉一郎記」と墨で書かれています。この瓦をどうしたらいいか迷い,元医学部長黒田嘉一郎著の随筆「蔵本雑記」を読みました。

瓦屋根,屋根おろしの段に「・・・兵舎であったからには戦前に建てられたものであり,その老朽度からみて少なくとも50年はたっているであろう。また,新興の医学部の図書館としてどれだけ役立ったことか知れない。この大役を果たした老朽建物は今,跡形もなくたたきこわされようとしている。もし,この建物に心があれば,世の人の無情に涙を流しているに相違ない。私は頼んで人夫がしらから2,3枚の瓦をゆずり受けた。この建物に対する私の哀歓いろいろの思い出と,後世,徳島大学医学部史を編む人の資料のために。(43.7.12)」の記述があり,この時の瓦だと分かりました。

現在の蔵本分館は,昭和33年徳島大学医学部15周年記念事業として立案された昭和37年建設の積層書庫と昭和38年建設の鉄筋2階建ての北棟閲覧室からはじまり,昭和54年に南棟,平成6年に東書庫が建設されました。

黒田先生は,高島医学部長の後を受けて昭和34年に医学部長となり,医学図書館の改築事業も引き継ぎました。職員,卒業生,父兄会,県医師会・歯科医師会・薬剤師会そして一般の方からの寄付金と県・市町村補助金をあわせてできた閲覧室と国庫負担金によりできた積層書庫建設に寄せられた学内外の多くの方のご尽力について当時の様子を書かれています。

この「蔵本雑記」の表紙は藍色の阿波のしじらで,見返しは黄色の阿波川田の手漉き紙です。蔵本分館に隣接する大塚講堂や東京オリンピックの金メダル作者が彫られた初代学長の石碑の話など,瓦のおかげで蔵本キャンパスの歴史の1ページを知ることになりました。

ということで,この瓦は,歩兵43連隊,徳島医科大学,医学部図書館,医学部事務室に使われた建物の屋根瓦でした。

◎屋根瓦

屋根瓦

引用文献:黒田嘉一郎著.蔵本雑記.黒田嘉一郎教授定年退職記念会,1971.3
     490.4||Ku72 蔵本集密図書
     099.4||Ku 本館1階郷土資料コーナー

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