【す だ ち】徳島大学附属図書館報 第72号
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○M課長の図書館俳句散歩道(新年の巻)

俳句の季語には,春夏秋冬の他に新年があるのはご存じでしょうか? 新年は1月1日から15日までの期間とされており,またそれぞれの季節には,時候や天文,行事,生活などの項目に分類されます。
是非歳時記をご覧いただきその四季おりおりの季語に日本の文化を感じてください。
春の花,秋の月,冬の雪は季語の中で最も代表的なものです。

その新年の季語には「元旦」「年玉」「あらたま」「初夢」「雑煮」など新年を想像する季語がたくさんあります。

  元旦は田毎の日こそ恋しけり   芭蕉
  初夢に故郷をみて涙かな     一茶

  長病みの今年も参る雑煮かな   子規

現在ドラマ化されている「坂の上の雲」の正岡子規は,今年の干支と同じうさぎです。

不治の病とされる結核に侵され,22歳で喀血した時の句です。

  卯の花をめがけてきたか時鳥
  卯の花の散るまで鳴くか子規

卯の花を自分になぞり,肺病を当時「啼いて血を吐く時鳥」と形容された時鳥で表した子規の心中を思う時,その無念さといいようのない病への不安は,想像を絶するものであったと思います。そうした中において,子規の命が散るその最後の瞬間まで,自分の俳句の道を求め,命を燃焼させ続ける覚悟を詠んでいます。

同じうさぎ歳であった漱石は,その句に対して次のように詠んでいます。

  帰ろふと泣かずに笑へ時鳥

子規と漱石が生涯に渉ってやりとりした往復書簡の,これが最初のものであったそうです。

子規と漱石,明治を代表する二人の文豪はかたい友情に結ばれ,松山の「愚陀仏庵」とよんだ漱石の下宿での句会をはじめとして,「吾輩は猫である」「坊ちゃん」の世界へと展開していきます。

 今年の干支はうさぎ

オーバーコートを着た白うさぎに興味をひかれた少女アリスが,白ウサギを追いかける内に不思議の国へと迷いこんでしまう「不思議の国のアリス」,
月で餅をつくうさぎ,うさぎとカメ,因幡の白うさぎなど「うさぎ」にはさまざまな想像力や夢をかきたてるものがありますね。

 子規と漱石のみた「夢」とは何だったのでしょうか?
 その多くの俳句や作品にふれて考えてほしいと思います。

今年の「夢」の実現に,図書館を大いに利用してください。
まだ,夢を見ていないあなたは,図書館でその夢を見つけてみませんか?

  初春の 夢に跳ねにし 卯年かな

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