いよいよ師走になりました。師走の主な語源説として,師匠の僧がお経をあげるため東西を馳せる月と解釈する「師馳す」があるそうです。
年末が近づいています。年の暮れの代表的な俳句を紹介します。
ふる里や へその緒に泣く 年の暮れ 芭蕉
芭蕉は故郷を愛し,『野ざらし紀行』『鹿島紀行』『笈の小文』『更科紀行』『奥の細道』『嵯峨日記』と旅に生き,旅に死んだ漂泊の詩人として俳句を綴っています。そして最後の旅は故郷が終着点になっています。
なつかしいふる里の父母,そして自然,温かみのある詩情を感じる句です。
芭蕉のふるさとは 伊賀です。
ともかくも あなたまかせの 年の暮れ 一茶
この句の「あなたまかせ」というのは,他人まかせという意味ではなく,阿弥陀様のことを指しています。一茶は浄土真宗の門徒であり,信仰の篤い父の影響を受けたようです。
3歳で母を亡くし15歳で奉公に出され39歳で故郷に戻ると看病の甲斐なく父を亡くし,遺産相続問題が継母・異母弟との間に起こります。結婚してから授かった4人の子供は夭逝し,妻とも死別します。
我ときて 遊べや親の ない雀
やせ蛙 まけるな一茶 これにあり
「雀」や「やせ蛙」とは 一茶自身のことかもしれません。
一茶の俳句には ユーモアの中に愛があふれています。
「おらが春」の中にあるこの一句の「あなた」とは,一緒に暮らす家族,縁のある人,ふるさとの自然,鳥や動物,身近にある小さな「しあわせ」かもしれません。
人生に対する悲しさや深さを見つめ,そして心が浄化されていく「やさしさ」を感じる句です。
年の暮れが近づいています。 今年1年に感謝して,新しい素直な気持で新年を迎えたいものですね。
今年読み残した本はありませんか? 図書館で「あなた」の名著を探してください!
感動で 泣きし名著や 年の暮れ