【す だ ち】徳島大学附属図書館報 第62号
メールマガジン「すだち」第62号本文へ戻る


○<不定期連載> 読書Fun!~司書Sが楽しく読んだ本をご紹介します

人の一生のうち,一番賢いのは12歳~14歳ごろのいわゆる思春期ではないか,と思うことがあります。
ウラオモテのない真理を求め,大人が「大人の事情」として忘れてしまっている“正しさ”をまっすぐに追求してくるという意味で。

今回は,そんな12歳の少女が書いた(語った?)本を紹介します。
「あなたが世界を変える日:12歳の少女が環境サミットで語った伝説のスピーチ」です。

これは,副タイトルの示すとおり,12歳の少女が,世界の首脳が集まる環境サミットでスピーチするまでの顛末とそのスピーチ,そして彼女の現在などが書かれた本です。絵本のようなかわいい本で,ページ数も少ないのですぐに読めてしまいますが,内容はとても深いです。

両親の影響で環境問題に関心をもった少女セヴァンは,子どもたちで環境を考えるグループをつくり,活動をはじめます。
そしてアフリカで環境サミットが開催されるということを聞いて,子どもの代表として参加したい!と行動をおこします。
これだけでも充分すごい少女なのですが,さらに驚くべきは彼女のプレゼンテーション能力です。
参加したサミットでスピーチできることが突然決まり,移動する車のなかで考えたというスピーチは,誰にでもわかる簡単な言葉で話されているにも関らず,環境問題が起こっている原因は何かを的確に捉えています。
そして,大人たちにこどもの未来をどうすべきか考えて欲しいと訴え,ゴア元副大統領やゴルバチョフ元大統領に「このサミットで一番すばらしいスピーチだった」と言わせるのです。
ここでそのスピーチの一部を紹介してもよいのですが,実際に読んで感じていただきたいのであえて書かないことにします。
どうです?何だか読みたくなってきませんか?

その環境サミットが開催されたのは1992年。セヴァンはもう大人になっています。そして今も環境に関する活動を行っています。あれから,相変わらず地球の温暖化は進んでいますが,セヴァンはあきらめていません。

ところで,私には11歳の娘がいます。同年代の子どもがこんなすごいことをしたんだということを知ったら,どんな風に感じるんだろう,子どもだってこんな風に行動できるんだ,とか,エコの大切さを分かってくれるだろうか,などと考えて,娘に「ぜひ読んでみて」と勧めてみました。
すると,娘はとても感動して,キラキラした目で「すごいね!」を連発。学校でも先生に話したりしたそうです。
母の気持ちは伝わった,と私もうれしくなりました。
しばらくして「もう一度あの本が読みたい,読書感想文に書きたい」とまで言ってくれたので,母は娘の心に響く良いものを与えたのだ,と悦に入っていたら「あのね,エコとかに関係する本で読書感想文を書くと,賞をもらえる確率が高いんだよ」と娘。

・・・ええっ!? そんな理由なの!?
なんて打算的!
思春期のまっすぐな心はいずこへ・・・(泣)

まあ,彼女は彼女で強く生きていけそうで,ええ,安心です。はい。


「あなたが世界を変える日 : 12歳の少女が環境サミットで語った伝説のスピーチ」の情報
書名:あなたが世界を変える日 : 12歳の少女が環境サミットで語った伝説のスピーチ
著者名:セヴァン・カリス=スズキ 著 ナマケモノ倶楽部 編・訳
出版社:学陽書房 出版年:2003年7月

所蔵情報
所在:徳島大学附属図書館本館2階東閲覧室
   請求記号:519||Cu 資料ID:204002065

メールマガジン「すだち」第62号本文へ戻る