【す だ ち】徳島大学附属図書館報 第50号
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附属図書館長の任期満了を前にして

―附属図書館における今後の課題―

徳島大学附属図書館長 石川 榮作

 平成19年4月1日付で徳島大学附属図書館長に就任してから早や2年が経ち,この 3月で任期満了となります。就任当初はとりわけ電子ジャーナルや予算関係など ではほとんど何も分からず,戸惑う毎日でしたが,情報部長や学術情報マネジメ ント課長・サービス課長をはじめ,図書館職員の皆さんからいろいろと懇切丁寧 に教えていただき,無事に2年間の職務を全うすることができました。心から感 謝しています。館長退任にあたって,2年間を振り返りながら,今後の課題をまと めておきたいと思います。

1. 徳島大学附属図書館本館の改修
 私の館長任期中の最大の出来事は,何と言っても,本館の改修でしょう。それも単なる耐震改修ではなく, これまで2階にあった玄関を1階に移して,旧館と新館の間にあった5層の積層書庫を解体して,2階に新しく フロアを作ったりするなど,本館全体の大規模な改修となりました。それによって図書館の利用スペースが かなり広くなって,理想の学習環境を整えることができました。このような図書館の改修にご理解を賜りま した青野学長をはじめ役員会の皆様,そしていろいろとお世話してくださいました施設マネジメント部の皆様に 厚く御礼申し上げます。
 徳島大学附属図書館本館はこの3月19日に竣工し,3月下旬から事務局や図書の引っ越し作業が始まりますが, 81万冊以上にも及ぶ蔵書の整理・整頓にはかなりの時間がかかりますので,リニューアルオープンは6月以降と なります。このことに関しましては,何卒ご理解いただき,ご了承くださいますよう,お願い申し上げます。

2. 「コミュニケーションの場」「教育の場」としての図書館
 このように徳島大学附属図書館本館は6月以降にリニューアルオープンする運びとなりましたが,しかし,それですべてが終わった わけではありません。学生や教員たちが利用して,はじめて真の意味での図書館が存在します。図書館は「ある」 のではなく,私たちが「創り上げていくもの」と言ってもよいでしょう。そういう趣旨で2年前から 「知的感動ライブラリー」と銘打って,月に1度,映画・オペラの鑑賞会を開いてきました。この催しは私にとって 楽しみでもあり,またそのためかなりの本を読み,よい勉強にもなりました。退任後も,総合科学部の一教員として 引き続きこの催し物に協力したいと考えています。新しい図書館にはマルチメディアコーナーもあれば, グループ研究室,視聴覚コーナー,ブラウジングコーナーのほかに,カフェテリアなども設置されます。学生のみならず, 教員も図書館を教室として利用するなどして,図書館が「コミュニケーションの場」「教育の場」となることを期待 しています。最近特に注目されている新しい学習環境としての「ラーニング・コモンズ」を実現することが今後の 大きな課題です。

3. 学生用図書の整備・充実
 それと同時に学生の「読書習慣」の推進も図書館の大きな課題です。そのためには学生用図書の整備・充実も必要です。 ただ予算には制限がありますので,効率的に整備・充実させていかなければなりません。その一つの試みとして, 今年度よりブックハンティングを実施しました。これは各学部代表の学生を実際に書店へ引率して,そこで学生自らに図書選定を してもらい,学生のニーズに応えるためのものです。これによって読書が大好きになった学生もいるようで,ある程度の成果は あったようです。また秋には「読書週間」に合わせて,「懸賞論文」の応募も2年前から始めましたが,応募の学生がまだ少数と いうところが問題です。ブックハンティングにせよ,懸賞論文にせよ,今後ともさらによりよい方法を見つけ出して,工夫を 凝らしながら実施していくのが,今後の課題です。

4. 電子ジャーナルの充実
 情報化社会の発展に伴って電子図書館的機能の整備・充実も図書館の大きな課題です。特に電子ジャーナルは現在の大学の 教育研究には必要不可欠なもので,本学でもかなりの経費を使って,その充実に努めてまいりました。ただ電子ジャーナルの 価格はこのところ毎年高騰を続け,その対応に苦慮しているところです。今後も予想される価格高騰に対してどのように 対処していくのか,それが今後の一番大きな課題でもあります。

5. 貴重資料のデジタルコンテンツ化
 また貴重資料のデジタルコンテンツ化も重要な課題です。私の任期中には念願の「蜂須賀家家臣団家譜史料データベース」が デジタル化され,すでにインターネット上で公開されています。今後ともこのような貴重資料のデジタルコンテンツ化が大いに 望まれるところです。

6. 「機関リポジトリ」の構築
 また電子図書館的機能の整備・充実に関する今後の課題として「機関リポジトリの構築」も挙げられます。「機関リポジトリ」 とは特に教員のこれまでの研究成果を一次情報として蓄積保存し,キーワードとなるメタデータを付してインターネットを通じて 広く世界に発信し,多くの利用者の便に供するものです。幸い,本学にはすでにEDBがありますので,それと連動すれば,実施が比較的 容易な立場にあります。ここ1年間,実験台として私の研究業績(著作権の関係で著書数冊は除く)をすべて,EDBに張り付けました。 他の利用者に情報を提供するのが本来の目的ですが,個人的にも便利な点があります。それはパソコンさえあれば,世界のどこからも 自分の研究業績にアクセスできるという点です。これまでのように抜き刷りなどの現物を持ち運ぶ必要がない点などは大きな利点です。 この「機関リポジトリ」の構築は平成22年度からの第二期中期目標・中期計画の大きな柱となることは確かです。是非,その構築を 実現してほしいと願っています。

7. 情報リテラシー教育の充実
 電子図書館的機能の整備・充実とともにその情報リテラシーの教育も今後の図書館の大きな役割です。全学共通教育センターや 高度情報化基盤センターとの連携により学生のための情報リテラシー教育を充実させていただきたいと望んでいます。

8. 地域住民や留学生へのサービス
 そのほかに地域住民へのサービスも大切です。これはすでに実施されていますが,さらに図書館をより広く開放して,これまで以上に 地域に貢献していくことが課題です。
 また留学生に関しても,2020年を目途に全国30万人の留学生を受け入れる計画がある中,留学生にも開かれた図書館をめざす必要が あります。国際センターと連携して対処していくことが求められます。

9. メールマガジン「すだち」の充実
 最後に,このメールマガジン「すだち」発行も徳島大学附属図書館独自のものですので,今後とも継続して毎月1回発信していって ください。より多くの人がこれを利用して,徳島大学附属図書館にひんぱんに足を運んでいただきたいものです。

10. 未来に大きく開かれた図書館
 以上,2年間を振り返りながら,今後の課題をまとめてみましたが,電子図書館的機能の整備と充実とともに,新しい学習環境としての 「ラーニング・コモンズ」を実現してゆき,両者が調和を保ちながら,徳島大学附属図書館が「研究の拠点」「教育の場」「コミュニケーションの場」 となるところに理想の図書館の姿があります。理想はただ心に描くだけのものではなく,実現するためのものです。繰り返しになりますが, 図書館は「ある」のではなく,「創り上げる」ものです。図書館を大いに活用して,未来に大きく開かれた理想の図書館の実現をめざしてほしいと 願っています。本館・分館ともに,徳島大学附属図書館が今後ともますます充実・発展していくことを期待しております。2年間,どうもありがとうございました。


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